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連邦議会、予算付随法案を可決

 連邦議会は5月19日(金)、史上最大の付加価値税引き上げを中核とする予算付随法案を連立与党の賛成多数で可決した。野党は反対した。同法案は連邦参議院の同意を必要とする。連邦参議院は6月16日に審議するが、同意は確実と見られている。

 同法案の要旨は次の通りである。

     付加価値税を2007年1月1日に現行の 16%から 19%に引き上げる。その内 2%分の増収は連邦と州の財政立て直しに、残る 1%分は賃金付随コスト引き下げの財源に充てる。但し、現行 7%の付加価値税(食料品、新聞、本など)は変わらない。2007年は約194億ユーロ、2008年は約228億ユーロ、2009年は約233億ユーロの増収が見込まれている。

     失業保険料率を2007年1月1日に現行の 6,5%から 4,5%に引き下げる。

     保険税を2007年1月1日に現行の 16%から 19%に引き上げる。年間約18億ユーロの増収が見込まれている。

     連邦から年金保険への連邦補助金を2006年は1億7000万ユーロ、2007年からは3億4000万ユーロ削減する。連邦補助金減少分は他の措置により賄われる。例えば、日曜・祭日・深夜手当の控除は時給25ユーロを上限とする。ミニジョブの課税率を 25%から 30%に引き上げる。

     法定疾病保険への連邦補助金を2段階に分けて廃止する。2007年は現在の42億ユーロから15億ユーロに削減し、2008年にはゼロにする。但し、計画されている保健改革でこの措置が修正される見通しである。失業手当 II 受給者の法定疾病保険料を引き下げる。この措置で連邦は2006年に9000万ユーロ、2007年からは年間1億8000万ユーロ節約できる。

     連邦公務員、連邦恩給受給者、兵士に対する特別手当を2010年までに半減する。但し、低所得クラス(A2~A8)のクリスマス手当は125ユーロに25ユーロほど引き上げる。連邦政府の閣僚と政務次官の特別手当は廃止する。

 メルケル連邦首相は、付加価値税引き上げが市民の大きな負担になることを認めた上で、失業保険料の引き下げと企業の競争力の改善を指摘して付加価値税引き上げを弁明した。シュタインブリュック連邦財務相も財政立て直しへのステップとして同法案を弁護した。債務償還は若い世代の負担になるので、債務のテンポを減速させなければならないという。

 それに対して、自由民主党(FDP)のヴェスターヴェレ党首は、社会民主党(SPD)とキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の総選挙公約を指摘して、「今日、SPDはSPDを選んだ人を裏切った。メルケル氏は首相候補者として財政の穴埋めのために税金を引き上げないと公約した」と批判した。

 一方、連邦議会では税制改正法案に関する第一読会が行われた。連邦議会は6月30日に採決する予定で、連邦参議院は夏休み前に採決できる見通しである(2006年5月15日のニュースを参照)

2006年5月29日)

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