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連邦会計検査院、連邦雇用庁と自治体を批判

   連邦会計検査院は、連邦雇用庁と地方自治体が失業手当 II の濫用を阻止するための審査を怠っている点と長期失業者に対する斡旋業務が不十分である点を指摘して、雇用市場改革「ハルツIV」の重大な欠陥を厳しく批判した。連邦会計検査院は、地域雇用局と社会福祉事務所が共同運営している事務所70ヶ所と地方自治体が単独運営している事務所20ヶ所を調査した。

 調査では、長期失業者が本当に失業手当 II 受給資格があるかどうかの審査(財産、銀行口座、不動産、家族構成、就業能力、労働許可などの審査)を連邦雇用庁と自治体が十分にしていないために、濫用を阻止できていない現状が明らかになった。申請件数の半分以上が審査されないか、不十分な審査だった。

 そこで、連邦会計検査院は、長期失業者の斡旋と審査における連邦雇用庁の参加権、監督権の強化と連邦労働省の監督の改善を求めている。それに対して、連邦雇用庁は、内部調査でも同じような結果が出ているとして、地方自治体との連携に問題があることを認めた。

 また、連邦会計検査院は、1ユーロジョブ(失業手当 II 受給者が追加的に取得できる時給1ユーロの仕事)が市場競争を損ない、正規の職場を排除する危険性があることを指摘して、現行の1ユーロジョブ斡旋を批判している。2005年は約63万人の失業手当 II 受給者が1ユーロジョブに従事したが、1ユーロジョブの4分の1は公益に適うものではなく、他の民間企業と競争する仕事(介護、清掃、建設、飲食店、オーケストラなど)であった。そこで、国が補助金を出して促進する仕事の条件を満たしているかどうかの審査を厳しくするよう求めている。

 社会民主党(SPD)と緑の党の前連立政権は、ハルツ IV 法が2005年1月1日に発効する前は、失業手当 II 給付費として年間140億ユーロの支出を計画していた。しかし、支出削減が目的だったハルツIVは新たな支出をもたらしている。2006年1月~4月の支出はすでに92億ユーロに達しており、今年の支出は約280億ユーロになると推計されている。シュタインブリュック連邦財務相は2006年度予算に244億ユーロ(2005年と同額)を計上しているが、中期的には支出削減を目指している。

 失業手当 II 給付費の膨張が財政の最大のリスク要因になることを懸念する連立与党はハルツ IV 法の改正を検討している。特に濫用を阻止するために、失業手当 II 受給資格の審査を厳しくする意向である。しかし、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)がハルツ IV 制度の抜本的改革を検討しているのに対して、SPDはその必要性はないという見解である。

 また、連立与党は秋には低賃金部門の改革にも着手する計画である。CDU/CSUは、50歳以上の長期失業者を採用した企業に対して、その賃金の40%までを国が補助する複合賃金(Kombilohn)の導入を提唱している。それに対して、SPDは最低賃金の導入を主張している。

2006年5月29日)

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