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贈収賄が疾病保険制度破綻の原因

    反贈収賄団体「トランスパレンシー・インターナショナル」が5月16日(火)に発表した「贈収賄年次報告」によると、ドイツ疾病保険制度は贈収賄や放漫経営、詐欺により年間80億~240億ユーロを失っている。清算詐欺、薬品工業の影響力行使は日常的である。研究者は賄賂を受けて研究結果を偽造したり、不正操作する。被保険者カードや医薬品が不法取引される。医者は薬品工業から賄賂を受けて高い医薬品を処方する。報告書ではこのような現状が指摘された。

 同団体によると、「ドイツは米国とスイスに次いで世界で3番目に疾病保険コストの高い国であるが、保険給付の質は国際比較で中程度に過ぎない」という。コストと給付の不一致は薬品工業の贈収賄、医者と患者の詐欺的行為に起因していると批判している。

 同団体は、贈収賄をなくせば、疾病保険料率を引き上げる必要はないという見解である。監視の難しい、不透明な官僚主義的構造が疾病保険コスト増加の主因であるとして、疾病保険改革における責任の中央集権化を政府に求めている。政府は疾病保険制度にさらに資金を注ぎ込むのではなく、放漫経営と贈収賄を助長する構造上の欠陥をなくさなければならないという。

 また、同団体は薬品工業と研究機関の不透明な関係も批判している。技術革新的な医薬品の開発が少なく、高いだけで効果のない偽装革新的薬品が市場に氾濫しており、アグレシブなマーケティング戦略がエスカレートしているという。1990年以降に商品化された約450の新医薬品の内、本当に技術革新的な医薬品は7つに過ぎなかった。

 効果のない医薬品を販売するために、研究結果が不正操作され、医者と薬局に大きなリベートが与えられる。しかし、犯罪行為の95%は暴露されないままである。そこで、同団体は、研究機関と大学が経済界からどのような支援金を取得しているかを公表すること、研究の偽造に対する罰則を厳しくすることを求めている。

 一方、患者と医者の詐欺的行為もコスト増加の原因である。例えば、被保険者が被保険者カードを不法転売し、新しい被保険者カードを申請するケースが増えている。診察内容を偽って、高い報酬を要求する医者も多い。また、開発途上国などに寄付されたり、安く提供された医薬品が包装を変えて、薬局で販売されるケースも増えている。そこで、同団体は、これらの詐欺行為に対する監視を徹底し、厳しい罰則を科すよう政府に求めている。

2006年5月29日)

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