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旧東独、連帯移転資金を非合目的に支出

 ドレスデンの財政学者ヘルムート・ザイツ氏が発表した調査結果によると、旧東独の州は旧東独復興支援を目的とする連帯移転資金を投資ではなく、年度予算の行政支出に充てていることが明らかになった。2005年は連帯資金 II からの移転資金の約半分に当る約52億3000万ユーロを非合目的に運用した。いくつかの州は3年連続で連帯資金規定に違反している。

 チューリンゲン州とザクセン・アンハルト州は移転資金濫用の批判に対して抗弁しているが、財務専門家は合目的でない資金運用をしている違反者(州)に対する制裁を規定するよう連邦政府に求めている。制裁なしには、旧東独は「まもなく連帯の資格がなくなる」という。

 旧東独は2005年から2019年までに全部で1050億ユーロの連帯資金を取得する。さらに、全部で510億ユーロのEU資金と企業助成資金がこれに加わる。現行の規定では、連帯資金はインフラ(道路、学校、工業地帯など)を旧西独水準にするための投資と「東西分裂による特別負担」を削減するための投資に支出しなければならない。ところが、多くの州は消費的支出(例えば、州予算の人件費など)、肥大化した州行政や郡行政に移転資金を充てているのが現状である。

 ザクセン・アンハルト州は移転資金16億ユーロの79%を消費的目的に支出している。連帯資金規定に違反する消費的目的支出の割合はチューリンゲン州が52%、メクレンブルク・フォアポメルン州が49%、ブランデンブルク州が41%である。ベルリン都市州は約20億ユーロの移転資金全額を消費的目的に支出している(100%)。それに対して、ザクセン州だけが移転資金全額を合目的に支出している(0%)。

 州民一人当たり債務額の州別比較(2005年)では、ブレーメンが18759ユーロで1位、次にベルリンの16919ユーロ、ハンブルクの12239ユーロが続く。最も少なかったのはバイエルンで3088ユーロ、次がザクセンの4019ユーロ、バーデン・ヴュルテンベルクの4328ユーロ、ヘッセンの6700ユーロだった。

 ザイツ氏は、ベルリンが厳しい財政難にも関わらず、年間約6億ユーロを文化部門に支出していることを批判している。旧東独における文化部門支出は旧西独よりも約50%も多いという。これは、「失業手当 II 受給者がタクシーで失業手当を取りに行くようなもの」で、旧西独の嫉妬心をかきたてると批判した。

 ザイツ氏は、東西統一直後、旧東独の州政府がすでに当時肥大化し、時代遅れになっていた旧西独の州行政を手本にしたこと、ザクセン州以外の州が東独(DDR)の職員をすべて引き受けたことが最大の失策だったと指摘している。現在、旧西独では州民1000人当り州職員数は36人であるのに対して、旧東独では42人である。また、旧東独の州が莫大な借り入れをしたことも現在の財政難の原因であるという。

 ザイツ氏は、州財政立て直しには人員削減だけでは十分でなく、連帯資金移転制度を抜本的に改革しなければならないという見解である。移転資金は人口基準に基づいて分配するのではなく、需要基準のみに基づいて分配しなければならないとしている

 この調査結果を受けて、連帯資金移転の見直しを求める声が大きくなっている。シュタインブリュック連邦財務相は旧東独の州首相と会合して、合目的でない支出を阻止する対策について話し合う意向である。同財務相は、各州がコスト削減による財政立て直しに着手しなければ、連帯資金の移転が終了する2020年後に深刻な財政難に陥ると警告している。

2006年6月13日)

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