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全国文相会議、全国統一テストの導入を決定

   全国文相会議は6月2日(金)、2009年から全国統一テストを導入することを決定した。ドイツの教育水準を把握するために、3年生、8年生、9年生の学力を抽出検査し、州別比較する。3年生の統一テストは5年ごとに、8年生と9年生の統一テストは6年ごとに実施する。グルントシューレ(4年生)卒業後、ハウプトシューレ(9年生)卒業後、レアールシューレ(10年生)卒業後に全国の生徒が習得していなければならない内容を定めた標準(カリキュラム)に基づく全国統一テストは、ベルリンのフンボルト大学の教育開発研究所が作成する。経済協力開発機構(OECD)の2回の国際学習到達度調査(PISA)においてドイツの結果が極めて悪かったことが全国統一テスト導入の背景にある。

 一方、全国文相会議はドイツ教育制度に関する最初の報告書「ドイツにおける教育」を発表した。今後は 2年ごとに作成する予定である。報告書では、ドイツ生まれの移民系若者(親が外国人移住者)の約50%は数学、読解力、自然科学で必要な基礎知識に欠けていることが明らかになった。ドイツの人口の18,5%は移民系で、その内の4分の1は26歳以下である。移民系若者の半分はドイツ国籍を取得している。

 特にトルコ系若者が学校だけでなく、職業訓練先及び就職先を探す際にも大きな問題になっている。トルコ系若者の約半分はハウプトシューレに通っており、ギムナジウムに通っているのは8人に1人に過ぎない。途中からドイツに移住してきた若者はすでに一定の教育水準にあり、ドイツでも相応の資格を目指しているが、ドイツ生まれの移民系若者は進学が難しい。PISA調査結果でも、ドイツへ移住してきた若者(第1世代)の方が、ドイツで生まれ育った移民系若者(第2世代)よりも学力が高いことが指摘されている。

 全国文相会議のエルドズィーク・ラーヴェ議長は、「この報告書から、教育政策の課題が明らかになった」と語った。報告書では、移住者の子供の教育問題、特にドイツ語習得問題が緊急課題であり、ドイツ語力が進学チャンスの前提であることが指摘されている。特に、移民系若者の割合が75%以上のハウプトシューレ(ハウプトシューレ全体の約20%)に問題がある。そこで、各州の教育省は、職業訓練先が見つからない移民系若者の支援を強化すると共に、教職につく移住者を増やしていく方針である。

 報告書では、ドイツ教育制度の現状が浮き彫りにされている。落第生と卒業資格なしに退学する若者が非常に多い。2004年/2005年度に落第した生徒は25万人以上で(生徒総数900万人)、落第率は2,8%と、国際比較でも極めて高い。また、ギムナジウムの生徒構成にも社会的格差が反映しており、親がホワイトカラーの生徒数は親がブルーカラーの生徒数の4倍である。

 職業教育では、学校卒業後すぐに職業教育を受けられず、職業教育のための準備をしなければならない生徒が急増している。ハウプトシューレ卒業資格のない若者は職業訓練先を見つけるチャンスはほとんどない。また、ドイツの大学生は大学在籍期間が長く、退学率も高い。総合大学では大学生の約4分の1が中途退学している。

2006年6月13日)

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