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地方裁判所、オランダ企業の薬局営業を認める

 ザールブリュッケン地方裁判所は8月9日(水)、ザールランド州がオランダ企業ドック・モリスに付与した薬局営業許可は無効ではなく、競争法にも違反しないとする判決を下して、薬剤師の訴えを却下した。ザールルイ行政裁判所が営業許可の合法性に関する判決を下すまで、ドック・モリスは営業を続けることができる。

 この裁判では、競争法に違反しているか否かだけが審議され、営業許可がドイツ薬剤師法に違反しているか否か、ドイツ薬剤師法がEU条約の「営業の自由」と合致しているか否かの問題は取り扱われていない。ドイツ薬剤師連盟がすでにザールルイ行政裁判所に訴訟を起こしており、本案は行政裁判所で審議される。しかし、最終判決は欧州裁判所で下されるものと予想されている。

 ザールランド州のヘッケン法務・保健・社会相は今年6月29日、薬品のインターネット販売をしているオランダ企業ドック・モリスに薬局の営業許可を付与した。それに対して、ドック・モリスへの営業許可はドイツ薬剤師法に違反するとして薬剤師が地方裁判所に訴えていた。

 ドイツ薬剤師法では、他主占有および複数占有が禁止されており、免許を取得した薬剤師、すなわち自然人だけが薬局の経営を認められている。従って、ドック・モリスのような株式会社、すなわち法人の薬局経営は禁止されている。

 しかし、ヘッケン法務・保健・社会相は、「EU加盟国の人(企業)にはEU条約の「移動の自由」が適用され、営業の自由を含む移住の自由を規定したEU条約とEU統一市場はドイツ国内法に優先する」と判断して、ドック・モリスに営業許可を付与した。

 ヘッケン法務・保健・社会相はドイツ薬局市場の自由化を求めている。薬局市場が自由化されれば、薬品が値下がりし、疾病保険の支出が削減される。疾病保険金庫は薬品支出の5~8%を節約することができると試算している。

 シュミット連邦保健相は、ドイツ薬剤師法がEU法に合致しないことが基本判決で確認されれば、すぐに法律を改正すると発表した。薬局市場の自由化は連邦政府が計画している保健改革にも大きな影響を及ぼすことが予想される。

 欧州委員会はザールブリュッケン地方裁判所の判決を「EU統一市場にとって喜ばしいシグナル」として歓迎した。欧州委員会はすでにイタリア、スペイン、オーストリアの閉鎖的な薬局市場に対するEU条約違反手続きをしており、今後のドイツの動向に注目している。

2006年8月15日)

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