ドイツのニュース

企業は喫煙者の採用を拒否できる

 連邦労働省のスポークスマンによると、ドイツの使用者は喫煙者の採用を拒否することができる。企業が採用で非喫煙者を優先することは差別禁止法にもドイツ労働法にも違反しないという。また、連邦法務省のスポークスマンは、「喫煙者か非喫煙者かは法律上の差別基準ではない」として、EU差別禁止指令に基づく差別禁止法はEU指令同様に差別からの喫煙者の保護を規定していないことを明らかにした。

 欧州委員会のスポークスマンの発言に対する連邦政府の見解を表明したものである。欧州委員会のスポークスマンは8月7日(月)、「EU内の企業は求人の際に喫煙者を除外してもよい」と語った。EU差別禁止規定に違反しないという。EU差別禁止指令は年齢、障害、宗教ないし信仰、同性愛、性別、人種による差別を禁止している。

 ところが、この発言後の反響が大きかったために、欧州委員会スポークスマンは翌日、「EUが喫煙者の差別を認めているという主張は誤った解釈である」として、欧州委員会はいかなる差別にも反対しており、当然のことながら喫煙者の差別にも反対することを強調した。但し、EUは特定の領域における差別だけを管轄としており、喫煙者保護はEU加盟国の管轄になるという。

 労働法専門家の間では、「使用者が喫煙者の採用を拒否できる」とする連邦法務省の見解に疑問を示す意見が多い。使用者は社内での喫煙を禁止することはできるが、喫煙者であることを理由に採用を禁止することはできないとしている。

 一方、ゼーホーファー連邦消費者相とシュミット連邦保健相は非喫煙者保護法案を計画していることを明らかにした。但し、連邦議会が今秋、議員グループが提出した非喫煙者保護に関する動議について審議し、採決する予定であるため、両大臣は連邦議会での採決結果を待ち、過半数の賛成が確実になってから、公共の場及び飲食店における禁煙に関する法案を提出する意向である。

 非喫煙者保護法案はすでに1998年に連邦議会で否決されたことがあるため、連邦政府は法案提出に慎重である。当時のコール政権の連邦保健相だったゼーホーファー消費者相は当時は禁煙に大反対であった。今でも与党内で飲食店における完全禁煙に反対する意見が多いが、ゼーホーファー消費者相は飲食店における完全禁煙を主張しており、喫煙できる年齢を16歳から18歳に引き上げることや未成年者にタバコを売り与えた成人に罰金を科すことなども検討している。

2006年8月15日)

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