オバサンの独り言

 

 最近、世界的に自然災害が多くなったのではないだろうか。ドイツでも 1月18日と19日の両日、ハリケーン級の大暴風が全土に大きな被害をもたらした。全国の交通機関はマヒ状態になり、18日夕方からはドイツ鉄道の全線が完全にストップした。全国に及ぶ自然災害は異例のことである。

 ここ数年、洪水や暴風、大雨、大雪、熱波、干ばつなどの自然災害が頻繁に起こるようになった。この冬は異常ともいえる暖冬で、雪が少ない。一般市民にも地球温暖化による気候変動が身近に感じられるようになってきた。

 「豊かで快適な生活」を追求する人間のエゴと驕りが自然との共存のバランスを乱し、独走してしまった。その付けが回ってきたのではないだろうか。近視眼的な政治は自然破壊の危機とその影響を認識しながらも、痛みを伴う具体的な行動を躊躇してきた。

 環境問題では米国や中国が批判の的になっているが、環境保護先進国を自負するドイツでも経済が環境保護に優先することが多い。欧州委員会は環境保護のために、新車の二酸化炭素排出量上限を2012年までに1km当たり120gに引き下げる法案を計画しているが、ドイツ自動車産業界とグロース連邦経済相はこれに猛反対している。反対の切り札はいつもの如く、「自動車工業の職場が失われる」という脅しだ。

 自動車メーカーは、2008年までに新車の二酸化炭素排出量を平均で140gに削減するという任意の自主規制を約束していたが、未だに160gを超えているのが現状である。業を煮やした欧州委員会は自動車メーカーに対して「自然にやさしい車」を法律で義務付けようとしている。

 また、ドイツでは、エネルギー資源節約と環境保護のために高速道路にも時速制限を導入しようという動きがあるが、自動車産業界の強力なロビー活動がそれを阻止している。ポルシェ、メルセデス、BMWの国ドイツには、世界で唯一、高速道路の時速制限がない。

 短期的利益追求に汲々としている企業とは異なり、国政を担う政治家には長期的な展望に立って一貫した環境保護政策を実践してもらいたいものであるが、残念ながら、環境保護問題だけでなく、禁煙問題でも疾病保険改革でも抵抗勢力に屈する政治家が多すぎる。

 先日の大暴風で大きな被害を受けた森林を見ながら、営林署の職員が「この森林が回復するまでには何十年もかかるのです」と話していた。自然災害が発する警告を私達は見逃してはならない。この警告を無視すれば、私達が犯してきた過ちを思い知らされる機会がますます増えることだろう。

2007年1月29日)

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