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連邦内閣、介護保険改革を閣議決定

  連邦内閣は1017日(水)、介護保険改革法案を閣議決定した。1995年に導入された介護保険の改革法案の要旨は次の通りである。

     介護保険料率は20087月1日に(名目上所得の)1,7%から1,95%に引き上げられる。子供のいない人の保険料率は1,95%から 2,2%に引き上げられる。

     介護給付率が引き上げられる。在宅介護サービスの現物給付は、要介護度1が2008年、2010年、2012年に現在の384ユーロからそれぞれ420ユーロ、440ユーロ、450ユーロに引き上げられる。要介護度2は現在の921ユーロから980ユーロ、1040ユーロ、1100ユーロに、要介護度3は1432ユーロから1470ユーロ、1510ユーロ、1550ユーロに引き上げられる。

     在宅介護サービスの現金給付(介護手当)は、要介護度1が同様に205ユーロから215ユーロ、225ユーロ、235ユーロに、要介護度2は410ユーロから420ユーロ、430ユーロ、440ユーロに、要介護度3は665ユーロから675ユーロ、685ユーロ、700ユーロに引き上げられる。

     施設介護サービスでは、要介護度1と2の現物給付は2015年まで変わらない。要介護度3の現物給付は2008年、2010年、2012年に現在の1432ユーロから1470ユーロ、1510ユーロ、1550ユーロに引き上げられる。特別に過酷なケースは現在の1688ユーロから1750ユーロ、1825ユーロ、1918ユーロに引き上げられる。

     老齢認知症患者が初めて介護保険の対象となる(要介護度0)。「日常生活が著しく制限されている」患者に対する追加給付は年間460ユーロから2400ユーロに引き上げていく。患者がまだ介護必要とせず(身体的には健康なので、要介護度なし)、世話だけを必要とする場合にも支給される。年間約 3万人が対象になると予想される。

     被雇用者は、突然に家族を介護しなければならない事態が発生した場合には短期的に最高10日間、長期的なケースでは家族を介護するために最高 6ヶ月間、無給休暇をとる権利を取得する。この期間は介護保険が社会保険料を負担する。従業員数が15人以下の企業にはこの規定は適用されない。

     既存の組織を考慮した上で、住民 2万人単位で介護支援所が設置され、相談窓口になる。

     介護金庫は要介護者約100人に対して1人のケアマネージャーを雇用しなければならない。このケアマネージャーがケアプランを作成し、サービス給付の際に支援する。

     要介護者数人が住居共同体ないし介護付き住居で共同生活する場合には、それぞれの給付サービスをまとめて、共同で要求することができる。

     予防とリハビリを強化する。介護施設は、要介護者の要介護度を下げた場合には、一回限り1536ユーロを支給される。疾病金庫の組織「医療サービス」が3年ごとに予告なしに介護の品質を検査する(現在は5年ごと)。

 シュミット連邦保健相は、介護保険料率引き上げにより 2014年末までの介護保険給付を賄えると見込んでいる。保険料率引き上げによる増収は年間約25億ユーロである。失業保険料率が引き下げられることから、労使に追加負担は生じないという。

 シュミット連邦保健相は、短期的に家族を介護するために、10日間の有給介護休暇を被雇用者に与えることを提案していたが、キリスト教民主・社会同盟の反対で断念した。しかし、子供が病気の場合には、親が有給休暇をとれる規定があり、同じような有給介護休暇の導入を目指すという。連邦議会ないし連邦参議院における法案審議でこの点を改善できることを期待している。

 野党と経済団体は、改革案は不十分であり、長期的な介護保険財政問題が解決されていないと批判している。

2007年10月29日)

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