ドイツのニュース

連邦議会、疾病保険改革を可決

 連邦議会は2月2日(金)、「法定疾病保険における競争の強化」を目指す疾病保険改革法案を与党の賛成多数で可決した。賛成が378人、反対が206人、棄権が8人(すべて与党の議員)、欠席が22人(18人が与党)だった。キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)では23人が、社会民主党(SPD)では20人が反対した。野党は全員反対した。

 連邦参議院が2月16日に同法案を承認する見通しであることから、同法案は今年4月1日に発効する。但し、多くの規定は2009年から有効となる。(20067月11日、1016日、1030日のニュースを参照)

 法定及び民間疾病保険改革は段階的に発効する。今年4月には新しい保険義務など法定疾病保険の被保険者に関する様々な変更が導入される。2008年半ばには法定疾病保険の組織再編が始まり、20091月1日に保健基金が導入される。民間疾病保険改革と医師の報酬に関する改革も2009年に始まる。

 疾病保険改革の要旨は次の通りである。

     法定疾病保険金庫の支出は2007年に11億~12億ユーロ、来年からは年間15億ユーロ削減される。病院の支出/交通費の補助/治療薬の確定申告/医薬品支出などの削減により、疾病保険金庫の支出削減を達成する。

     給付サービスが拡大する。例えば予防接種、すべてのリハビリサービスが疾病保険金庫の義務サービスとなる。疾病保険への連邦補助金(税金が財源)は今年と来年にそれぞれ10億ユーロ増加する。2009年からは、連邦補助金が年間140億ユーロに達するまで(2015年)、年間15億ユーロずつ増えていく。

     法定疾病保険の被保険者は疾病保険金庫の保険料タリフを選択できるようになる。

     法定疾病保険の財政改革は2009年に始まるが、その前に連邦政府はすべての被保険者に対する統一した保険料率を設定する。保険料と連邦補助金は新しく設立された保健基金に納められる。各疾病保険金庫は保健基金から被保険者1人当たり一括保険料を支給される。初めは保健基金が疾病保険金庫のすべての支出を補償するが、後には支出の95%だけを補償することになる。

     疾病保険金庫は、保健基金が払う一括保険料で賄いきれない場合には、不足分を補整しなければならない。コスト削減でも補充できない場合には、被保険者から追加保険料(一括額あるいは所得に応じた金額)を徴収する。この追加保険料は月額最低8ユーロ、最高35,62ユーロとする。但し、保険加入義務所得の1%を超えてはならない。黒字を出している保険金庫は保険料の一部を被保険者に返金するか、追加サービスを提供することができる。疾病保険金庫間の競争を促す。

     民間疾病保険改革は2009年に始まる。2009年からは民間疾病保険会社は法定疾病保険に類似した給付サービスを包括する基本タリフを提供しなければならず、顧客を拒否することも解約することもできない。保険料は法定疾病保険の水準(現在、525ユーロ)を超えてはならない。基本タリフにおける収入がコスト補償しない場合には、他の被保険者が補償しなければならない。すでに民間保険に加入している人は法律発効後半年以内に(20091月~6月)基本タリフに切り替えることができる。他の民間疾病保険会社に移ることも可能である。但し、原則的に、民間疾病保険から法定疾病保険に移ることはできない。

     薬局は処方箋当たり 2,30ユーロ(従来は 2ユーロ)を疾病保険金庫に払わなければならない。その代わり、薬局も薬品会社と価格割引について交渉しなければならないとする計画は廃案になった(当初見込まれていた価格割引からの収入(初年度最低5億ユーロ)はなくなる)。

     2009年から保険医の報酬は従来の点数制ではなく、固定した料金規定に基づいて支払われる。過疎地の医者は追加報酬を取得する。この追加報酬は疾病保険金庫が払う。

 法定疾病保険金庫への連邦補助金の増加分は2010年からの租税引き上げで賄う可能性が高い。連邦財務省スポークスマンによると、計画されている140億ユーロの連邦補助金は連邦予算から出せないという。

 メルケル連邦首相は疾病保険改革を「極めて重要な成果」と評価した。シュトイバーCSU党首は、従来通り法定疾病保険金庫と民間疾病保険会社が疾病保険の主柱になることに満足感を示した。シュミット連邦保健相は、「疾病保険改革の恩恵を受けるのは被保険者と患者だ」と語った。

 それに対して、ヴェスターヴェレFDP党首は法案を「官僚主義的国家経済の導入」と批判した。経済団体、労働組合、疾病保険金庫、医師会は疾病保険改革を批判している。

2007 年2月14日)

戻る