オバサンの独り言

 

 いよいよドイツでも今年9月1日から公共の場での喫煙が禁止される。通常、左寄りの政党は自然環境保護や人権保護、保健問題などで、どちらかと言うと「進歩的」なはずなのだが、非喫煙者保護では目立って消極的だった。

 タバコ産業のロビー活動のせいか、タバコ税収入の減少を恐れているからか、喫煙する政治家が多いからか・・・。確かに、社会民主党の政治家には、カメラの前でもパイプをくゆらす人が多い。まるで、それが「革新」の象徴であるかのように。

 ドイツは「リベラル」であることを建前に、任意の自主規制を優先してきたが、結局失敗に終わり、禁煙の法制化に踏み切った。禁煙の法制化は欧州の趨勢であり、「・・・保護」の優等生を自負するドイツがこれを無視するわけにはいかなくなったということだろう。

 連邦議会は5月25日に非喫煙者保護法案を可決したが、採決した議員数は過半数に満たなかった。与党議員の中にも意図的に欠席する人が多かったようだ。決議不能申立がなかったから成立したものの、この採決結果には政治家の本音が窺える。

 「密閉した喫煙室での喫煙は認める」という例外規定はあるが、全体的に厳しい禁煙を定めている。未成年者(18歳未満)へのタバコの販売が禁止され、未成年者の公共の場における喫煙が禁止される。ドイツ鉄道は例外規定を適用せずに、車内と駅構内を全面禁煙にする方針である。

 各州は飲食店における非喫煙者保護を規定する州法を制定するが、ほとんどの州で「密閉した喫煙室」以外での喫煙が禁止される見通しである。

 長い議論の末にやっと法律が出来上がったわけだが、この規則をいかにして守っていくかという具体的な行動がこれからの課題である。連邦政府は施行の詳細を定めた政令を発布するという。違反者には秩序違反として5〜1000ユーロの過料が科せられる。

 すでに駅構内やバス停に禁煙マークが張ってあるが、無視されているのが現状だ。コントロールもない。どんなに素晴しい法律があっても守らなければ「宝の持ち腐れ」であり、一貫した取締りと罰則の徹底が不可欠である。

 このところ連日報道されている自転車ロードレースのプロ選手のドーピング問題でも、モラルの低下は元より、規則の厳守と取締りの難しさが明らかになった。

 20079月1日は受動喫煙に悩まされてきた人にとって喜ばしい日であり、愛煙家には厳しい時代の到来である。連邦保健省は「密閉した喫煙室」を設けない ため、喫煙する職員はフリードリヒ通りで一服するのだという。連邦国防省の職員は駐車場の自転車置き場の隣だとか。目に浮かぶようである。

 非喫煙者保護法の施行とドイツ市民の反応を見守りたい。

2007年5月30日)

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