オバサンの独り言

 

 ドイツでは、大学生に占める女性の割合が約50%、博士課程では40% と、女性の教育水準が向上している。企業で活躍する女性の話題も多くなった。しかし、大学教授や取締役のレベルになると、女性の割合は急激に低下する。上級管理職になるほど、男女の賃金格差が広がっている。依然として、「ガラスの(見えない)天井」が存在しているということだろう か。

 欧州委員会の調査結果によると、欧州連合では女性の時給が平均で男性よりも15%少ないという。ドイツは22%(4位)、英国は20%(6位)、フランスは12%(18位)。ドイツでは女性のパートタイム勤務の割合が約45%と、オランダに次いで最も高い。

 男女の賃金格差は30歳未満の年齢層では7%であるが、30歳〜39歳の年齢層ではその3倍に広がり、定年退職前には30%に達する。女性が1、2年間育児休業すると、そのネガティブな影響が定年退職までずっと続く現状を担当委員は指摘している。

 また、男女の役割分担も負の要因だという。男性は平均で週に7時間しか家事をしないが、女性は仕事のほかにも週24時間家事をしている。パートタイム勤務の女性は35時間。育児が昇進を中断させ、家事が継続教育や超過勤務を困難にするため、女性は男性よりも賃金の少ない職場に従事するのだと分析している。

 国際労働機構(ILO)も仕事と家庭の両立が改善されなければ、労働市場における機会均等は可能ではないと指摘している。欧州委員会はこれまでの政策が大きな改善をもたらしていないことから、早ければ来年にEU男女雇用機会均等指令案(公平な労働時間・賃金制度、父親の育児休業など)を作成する計画である。

 一方、米国の研究者の調査結果によると、職場を決める際に女性は男性よりも報酬額 (お金)にこだわらない傾向が強い。報酬の交渉では男性の方が女性よりも高い報酬を獲得している。但し、透明性のある規則に基づく交渉になると、男女の差はなくなるという。

 研究者は、「男性と競争することに対する女性の遠慮」がトップへの昇進を妨げる要因になっていると分析している。女性は生まれながらに控え目なのではなく、社会がそれを女性に 求めているのだという。性別の要素よりも社会的要素の方が男女の行動の差に多大に影響しているという結論に達している。

 シモーヌ・ド・ボーヴォワールは1949年に出版された「第二の性」の中で、「人は女に生れない。女になるのだ」と書いている。この言葉がいまだ色あせていない現実に もどかしさを覚える人も多いだろう。男女の役割分担は社会と文化に深く根ざしており、この固定観念からの解放には何世代にも亘る長い時間がかかりそうである。

 欧州委員会も指摘しているように、雇用機会均等、男女平等などのきれいな言葉を並べるだけでなく、それを 本気で実施するように政治と経済界、男性に圧力をかけなければ、仕事と家庭の両立 のための社会環境、家庭環境はいつまでたっても実現しないだろう。欧州委員会のアプローチを歓迎したい。

 仕事と家庭の両立の大前提は、女性は元より、男性の意識改革だということを忘れてはならない。

2007年7月23日)

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