オバサンの独り言
ドイツでは育児休業する父親が増えているという。うれしいニュースである。教会や保守勢力の反対を受けて激しい論争の末にようやく導入された父母手当のお陰だ。 父母手当申請者に占める父親の割合が12,1%。申請した就業者に占める父親の割合は17%。片方の親が受給できる最高期間の12ヶ月間育児休業した父親が6884人・・・。2007年1月1日の父母手当導入前は育児休業する父親の割合が3,5%だったというから、大きな前進である。 働いている母親の89%が12ヶ月間の育児休業を取得しているのに対して、育児休業した父親の3分の2は2か月だけの「父親月(パートナー月)」を利用している。出産直後は母親が育児休業し、後で父親にバトンタッチするというケースが多いようだ。出産直後は授乳もあるので自然の成り行きといえよう。 大半の父親が2か月間の「父親月」だけを申請しているが、フォン・デア・ライエン連邦家族相が述べているように、父親たちがこれまで異端視されていた「父親の育児休業」に対する権利を企業に請求したこと自体に大きな意義があると思う。この変化を軽視してはならない。 父母手当を巡る論争とその導入が転機となって、少しずつながらも着実に社会の意識が変わってきたことは事実だ。 新聞報道によると、メルケル氏が連邦首相に就任して以来、連邦首相府がベビーブームを迎えているという。社会民主党(SPD)/緑の党の前連立政権下の2002年12月〜2005年10月には首相府の19人の職員に子供が生まれた。キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)とSPDの大連立政権下では2005年11月から現在までに48人の職員に子供が生まれている。 その背景には連邦首相府の職場環境の変化もあるようだ。メルケル氏が首相に就任した頃、彼女の重要な同志のうちの二人が妊娠し、出産後に職場復帰することになった。そこで、メルケル首相は「仕事と家庭の両立」のための様々な措置を施さなければならなかった。例えば、パートタイム勤務、保育サービス、職員の保育ルームの設置。首相府は、議論するだけでなく、具体的に実施することを余儀なくされたのである。 前政権下では、連邦首相府職員の出産後の職場は他の省や官庁に移されていた。直接の圧力や強制があったわけではないが、「首相府はパートタイム勤務の職場ではない」という暗黙の了解があり、転勤せざるを得ない環境だったという。 そんな「母親にやさしくない職場環境」がメルケル首相の下で変わった。メルケル首相就任後の3年間で子供を出産した連邦首相府職員数は10人から28人に上昇している。フォン・デア・ライエン連邦家族相の父母手当制度を強力にバックアップしたメルケル連邦首相の「静かな実行力」がうかがえる。 フォン・デア・ライエン家族相は「父親月」の延長を計画している。父母手当の導入で保守勢力の堤防を崩すことができた。突破口を少しずつ広げていけば、自然に川はできてくる。道は開けてくる。
家族相はこの14ヶ月間の動向を「静かな革命」、「父親運動」と名付けた。社会の意識改革には「女性(解放)運動」だけでは限界がある。「父親(解放)運動」が「仕事と家庭の両立」には不可欠なのである。 (2008年7月15日)
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