オバサンの独り言

 

  ドイツの色は「黒と赤」から「黒と黄」に変わった。社会民主党(SPD)が大敗して大連立政権が終わり、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)が保守中道の連立政権を樹立してから早3ヶ月が過ぎようとしている。

   この新政権はスタートから躓いているようだ。まだ前政権時代の9月初旬にアフガニスタンでドイツ軍の要請による空爆があり、多数の民間人が死傷した。この問題は政権交代で解決したかに思われていたが、続々と新事実が明らかになり、政府は窮地に追い込まれている。

   すでに閣僚一人(空爆当時国防相)が辞任。若手政治家のエースとして国民人気No.1のグッテンベルク国防大臣も情報を隠していた疑いで激しく追及されている。議会調査委員会も始まった。

   新政権が抱える課題は空爆問題だけではない。連邦内閣が承認した来年度予算案によると、新規借り入れが過去最高の858億ユーロに膨れ上がる。マーストリヒト条約で決められた3%の財政赤字の上限は今年はどうにか守れそうだが、来年は約6%と大幅に上回る見通しである。

   2010年は歳出が過去最高、税収は2006年度並みに減少という最悪の状態になるにもかかわらず、連邦政府は家庭と企業の負担を軽減する税制改革と称する85億ユーロ規模の経済成長促進法の成立を強行した。

   同法には、子供手当の20ユーロ引き上げ、子供控除額の6024ユーロから7008ユーロへの引き上げ、企業の税制上の負担軽減、宿泊料の付加価値税引き下げ、相続税改正(会社相続者の負担軽減、兄弟・姉妹・姪・甥の税率引き下げ)などが規定されている。

   財政が厳しい中、専門家だけでなく国民の批判も無視して、なぜホテル宿泊料の付加価値税を19%から 7%に引き下げなければならないのか。なぜ宿泊料だけが対象になるのか。ホテル業者は宿泊料を値下げしないと明言しており、消費者への還元はない。理解に苦しむ景気促進策である。

   この付加価値税引き下げにはキリスト教社会同盟(CSU)が固執した。どんなに理不尽な要求であってもマニフェストで約束したから絶対に譲れないということらしい。厳しい財政下における税制改革の強行は CSUFDPがマニフェストにこだわったからである。

   おやおや、どこかの国の新政権と似ていませんか? 

   ドイツの連立政権は第一党の CDUとその小さな姉妹党 CSU、第三党の FDPから成る。小党 CSU FDPに依存する CDUは常に妥協を余儀なくされる。場合によっては小党の言いなりにならざるを得ない。鳩山政権も同じような連立の苦悩を味わっていることだろう。

   しかし、民主党自身がマニフェストにこだわって、国益と民意を見失うことがないようにしてもらいたいものである。税金無駄遣いの一掃だけではマニフェスト予算の確保が困難な状況になってきたことから、「柔軟性も重要」と公約見直しの方向で検討し始めたようだが、民主党はマニフェストの難しさを切実に感じていることだろう。

   公約を修正すれば、公約違反と非難され、公約を守ることだけに固執して財政難を顧みずに実現させれば民意と国益に反していると非難される。マニフェストに政治生命を賭けてきた感のある民主党だけに、与党の厳しさを思い知らされているに違いない。票集めのための安易なマニフェストは命取りにもなる。

   ドイツのメディアは、米軍普天間飛行場の移設問題、天皇陛下と中国の習近平国家副主席との特例会見問題に鳩山政権の外交政策の危うさも指摘している。

   そんな折、小沢幹事長に随行した民主党国会議員約140人が次々と胡錦濤・国家主席と握手をして、記念撮影をする様子をテレビで見た。まるで、中小企業のオジサンたちの○○視察団のようではないか。日本の政治家の庶民化というか、幼稚化というか、なんとも情けない思いがした。

   小沢幹事長の記者会見を見ても与党議員の発言を聞いても随所に与党政治家の驕りが感じられる。官僚バッシングではなく、謙虚な態度で行政刷新を進めてほしいものである。

   自民党の派閥政治は多くの弊害をもたらしたが、民主党の小沢独裁政治もご免蒙りたい。日本でもドイツでも連立政権なればこそ、首相の指導力が求められている。

   では、皆様、楽しいクリスマスと良いお年をお迎えください。2010年もどうぞよろしく。

2009年12月18日)

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