オバサンの独り言
毎日、経済不況の暗いニュースばかりで、食傷気味になっている。おまけに、国からの巨額な公的資金(税金)で救済されている銀行がトップマネージャーやディーラーに法外なボーナスを支給することが明らかになり、モラルの低さに呆れてしまった。 特に金融業界における職業人としての責任感と倫理感の欠如は世界的な問題のようだ。取締役会も監査役会も無力をさらけ出した。 短期的な儲けに莫大なボーナスを払い、中期的・長期的なリスクには責任なし、マネーゲームの後始末は株主と納税者がするという現行のシステムこそが過剰なマネーゲームを助長したのではないだろうか。 報酬・ボーナス制度の見直しが政治問題にまで発展している。私利私欲に走る厚顔無恥なトップマネージャーたちには報酬制度改革はとても任せることができない。 自分のお金で商売をすれば、自ずと長期的な利益を考える。堅実な中小企業がそのよい例である。第三者による分別のある賢明な報酬・ボーナス制度改革を期待したい。 連日の暗いニュースに隠れてそれほど話題にならなかったが、うれしいニュースもあった。フォン・デア・ライエン連邦家族相が発表した2009年度家族レポートである。 ドイツの出生数が増加傾向にあるという。同家族相の下で、ドイツはそれまでの怠慢な家族政策から積極的な未来志向の家族政策に方向転換した。スカンジナビア諸国やフランスに比べると、ドイツはまだまだ家族政策の後進国であるが、両親手当や保育施設の整備が法制化され、遅れを取り戻しつつある。 家族レポートでは、子供を望む男性が増えていること、30〜40歳の女性における出生数が増加していることも明らかになった。仕事と家庭の両立を支援する社会づくりが始動したからであろう。 育児休業する父親も増えている。現在、若い父親の15,4%が両親手当を申請している。バイエルン州では22,1%。父親の育児休業や保育施設の拡張に消極的だったキリスト教社会同盟(CSU)のバイエルン州で父親の両親手当申請件数が最も多いというのは何と皮肉な現象か。フォン・デア・ライエン家族相はニンマリしているに違いない。 ある企業の人事担当者によると、育児休業した父親の中には、職場復帰後にパートタイム勤務、例えば週4日勤務を希望する人が多いという。この人事担当者は、「5年、10年前には全くなかった現象だ」と述べている。 両親手当が支給される14か月の育児休業期間のうち、母親が出産後12か月、父親が残る2か月育児休業するケースが多く、まだまだ伝統的な役割分担が見られるが、父親の育児休業に対するタブーの壁が崩されつつあることは確実である。 教育水準の高い男性(大卒者)の方が育児休業に積極的で、教育水準の低い男性はまだ伝統的な役割分担にこだわる傾向が強いという。その背景には、所得とパートナー(女性も大卒者であれば、職業に就いている人が多く、所得もほぼ同じ)における相違があるようだ。 ベルテルスマン財団の世論調査によると、大学入学資格を取得している男性の3分の2以上は家庭における平等な役割分担を目指しており、30%だけが「夫は妻と子どもの扶養者」と考えている。それに対して、ハウプトシューレ(9年生までの基幹学校)卒業の男性の70%は「伝統的な男性の役割が良い」と見ており、配偶者もパートで仕事をすることを望んでいる。 先日の新聞には興味深い小さな記事があった。バイエルン州のある郡の郡長さん(CSU)がドイツ初の郡長として 2か月間育児休業すると宣言したそうだ。野党はこの5人の子供の父親に拍手を送っているが、CSUはダンマリだとか。 この郡長さんから若い同僚へのアドバイスは「抵抗を排して実現させる!」。「ベビーシッターを頼めないのか」という党内の批判にもめげず、育児休業を貫いた郡長さんには女性と若い男性から激励の声が届いているという。 口先では物分かりの良い発言をする男性は山ほどいるが、自ら実行する人は少ない。有言実行の若い父親が増えてきたのは社会の意識改革が少しずつではあるが着実に進展していることの表れだろう。
育児休業宣言をした郡長さんに大きな拍手を送りたい。政策を決定する政治家が率先してお手本を示すことこそが最も効果的な宣伝である。 (2009年2月19日)
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