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連邦参議院、鉄道乗客権利法案を可決

   

    連邦参議院は515日(金)、鉄道の遅延・運休の際の乗客の権利を強化する鉄道乗客権利法案を可決した。公布の 2ヶ月後に発効する。同法により、ドイツは200912月3日からすべてのEU加盟国に適用されるEU規則を国内法に移行する。

   新しい鉄道乗客権利法は電車の遅延・運休の際の乗客の賠償請求権などを規定している。また、身体障害者の鉄道利用が改善される。

   同法によると、電車が遅れたり、運休した場合には、鉄道会社は乗客に賠償を払わなければならない。目的地に60分以上遅れて到着した場合は、乗車料金の25%が払い戻される。120分以上の場合は50%。乗客の要望に応じて現金で払い戻される。

   この規定は、一つの電車の遅れが60分以下であっても接続の電車に乗り遅れたために目的地に60分以上遅れて到着した場合にも適用される。

   また、目的地への遅延が60分以上の場合、宿泊が必要になれば、鉄道会社は乗客にホテル宿泊料を払わなければならない。60分以上の遅れになる状況になった場合には、乗客は乗車を断念して払い戻させるか、時間を遅らせて変更したルートで目的地へ行くことができる。

   近距離交通(50km以下、1時間以下)では、20分以上の遅れになる状況になった場合は、乗車料金の高い電車(長距離電車でもよい)に乗車することができる。夜中(0時~5時)に60分以上の遅延になった場合には、他の交通手段がない限りにおいてタクシーに乗り換えることができる(タクシー料金 80ユーロまで)。その日の最終電車が運休した場合は、目的地に他の交通手段で 0時までに到達できない場合には、タクシーに乗り換えることができる。

   但し、電車の遅延・運休が鉄道会社の運営上の問題ではない原因により生じた場合は(例えば、トラックが踏切に立ち往生してしまったための遅れ)、鉄道会社には賠償支払い義務がない。

   一方、同法は乗客がその権利を具体的に行使する方法を明確化していないことが指摘されている。法律で規定されている調停所の設置と権限も不明瞭である。

   現在、鉄道の乗客は問題が生じた場合、ドイツ交通クラブ(VCD)が2004年から運営する調停所に訴えることができるが、財源である連邦消費者保護省からの補助金は今年11月末までしか支払われない。この調停所がこれまでに扱った件数は1万2000件を超え、ドイツ鉄道はそのうちの85%のケースで調停所の提案を受け入れている。この調停所が引き続き運営されるかどうかは未定で、目下、消費者保護省とドイツ鉄道が話し合っている。

   ツィプリース連邦法務相は、鉄道だけでなく、航空、バス、船舶などすべての交通手段の乗客の仲裁を統括する調停所の設置を目指している。

2009年5月26日)

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