オバサンの独り言

 

  連邦議会は夏休み前の法案採決に忙しいようだ。今年は 927日に総選挙を控えているため、最後のチャンスを逃すまいと、夜中まで立て続けに採決している。

   政権が変われば、法案はまた一からのやり直しになってしまう。だから、重要であろうがなかろうが、審議もそこそこに、とにかく成立さておこうということらしい。

   選挙の年は重要な決定は期待できないといわれているが、大連立政権はこれぞ最後のチャンスとばかりに、残業も厭わず熱心だ。

   基本法改正(新規債務制限規定)や長年揉めていたリビング・ウィル規定、役員報酬法、大規模な減税(市民負担軽減法)の可決は大連立政権なればこその成果であろう。

   しかし、疾病・介護保険料の完全控除や年金の永久保証(?)、環境にやさしい新車への環境奨励金はうれしいニュースではあるけれど、財源なしの新規借入頼みではなんとも心許無い。

   連邦政府の来年度新規借入が1000億ユーロを超える見通しといわれている。金融危機で財政計画が狂ってしまったことは間違いないが、選挙のためのバラマキ政策も大きな要因といえよう。

   莫大な債務を抱えた次期政権はどうするか? 次の世代の負担など無視して借入で賄うこともできるが、新規債務制限規定やEU安定協定があるので、無限に借金し続けることはできない。となると、収入を増やすか、支出を減らすしかない。

   総選挙後の増税や社会保険料率引き上げ、給付削減を覚悟しておいたほうがよさそうだ。すでに付加価値税引き上げも噂され始めている。

   2005年の総選挙では、社会民主党は付加価値税引き上げに断固反対していたが、大連立政権に就くや否や、いとも簡単に政権公約を破って16%から19%への大幅引き上げに同意したという苦い現実を国民は見ている。政治家の言葉は信じられない。

   社会民主党の連邦首相候補シュタインマイヤー外相は選挙を念頭に、米ゼネラル・モーターズ(GM)の独子会社オペルの救済策を軽率にも最初から無条件で主張し、大規模な公的融資を躊躇していたキリスト教民主・社会同盟と冷静かつ慎重な経済的決定を求めるグッテンベルク経済相を厳しく批判した。

   結局、メルケル首相も選挙のために妥協して、公的融資で合意したが、オペル売却交渉で政府が選挙に縛られた政治家の弱みに付け込まれたことは明白である。

   後になってから交渉内容の詳細が少しずつ明らかになり、納税者は憤慨するばかりだが、もう後の祭り。政府が詳細を納税者に黙って政治的決定をしたことが分かっても、いつの間にか有耶無耶にされてしまった。

   ところが、国民は 6月7日の欧州議会選挙でバラマキ政策を厳しく罰したのである。社会民主党は票を伸ばすどころか、惨敗に終わった。シュタインマイヤー外相の大きな見込み違いだった。

   これを機に、政府は経営危機に陥っている企業への公的融資に慎重になった。国民が与党のバラマキ合戦に歯止めをかけたというわけだ。

   総選挙まであと 3ヶ月。選挙戦ではまだまだ予想外の事件やテーマが出てくるだろう。有権者には政治家のレトリックや現実離れしたイデオロギーに惑わされることなく、国の将来を見据えて投票してほしいと願うばかりである。

2009年6月23日)

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