ドイツのニュース

連邦参議院、諸法案を可決

   

    連邦参議院は 710日(金)、夏休み前の最後の議会で 61の法案を可決した。成立した主な法案は次の通りである。

  • テロ対策法では、テロリストに対する国家保護刑法が厳しくなる。犯行を企てる犯意も処罰される。犯行の準備段階でテロ対策を行使するため、武器や危険な物質(ウイルス、毒物、放射性物質、爆薬、起爆装置)の保管、譲渡、それに必要な原料の調達、保管も法定刑に含まれる(最高10年の自由刑)。テロリストキャンプへの参加やインターネット上における爆弾製造手引きも処罰される。

  •  児童ポルノ対策法では、児童ポルノサイトへの接続を遮断するブロッキング制度が導入される。8月1日からネット事業者は「ストップ」表示で児童ポルノサイトへの接続を遮断することを義務付けられる。連邦刑事庁は毎日更新した児童ポルノサイトのリストをプロバイダーに伝達する。(2009623日のニュースを参照)

  • 市民負担軽減法では、201011日から疾病保険料と介護保険料が完全控除できる。但し、基本保険料のみが対象となる。保険控除限度額は、保険料を全額負担している納税者(自営業者など)で年間2800ユーロ、その他の納税者で年間1900ユーロにそれぞれ400ユーロずつ引き上げられる。但し、疾病・介護保険料はこの限度額を超えても完全控除できる。疾病・介護保険料がこの限度額に満たない場合には、職業不能保険料、責任保険料、労災保険料など他の予防保険費用も控除できる。また、年間売上50万ユーロ以下の中小企業は2011年末まで、その売上税を前払いする必要がなくなり、顧客が勘定を払ってから税務署に納税すればよい。(2009623日のニュースを参照)

  • 役員報酬法では、役員報酬における企業の持続的発展の基準が強化される。また、経営悪化の際に、役員報酬の削減が容易になる。取締役員の報酬は監査役全員参加の監査役会で最終決定する。役員報酬体系(ボーナス、株式オプションも含む)は短期的利益ではなく、企業の長期的・持続的な発展に基づくものでなければならない。株式オプションは早くても 4年後に行使できる。監査役会は、経営状況が悪化した場合には、事後になってからも役員報酬を削減することができる。監査役会が不適当な役員報酬を決定した場合には、株主に対して損害賠償義務を負う。損害が発生した場合は、役員は損害賠償請求の最低10%を自己負担しなければならない(D&O責任保険)。但し、年間固定給の1,5倍を上限とする。旧取締役は退職後最初の 2年間は監査役会に属することができない。(2009623日のニュースを参照)

  • 農業用ディーゼル税を引き下げるエネルギー税法改正は、経済危機における農家の負担軽減を目的とする。(2009623日のニュースを参照)

  • 刑事手続きにおける合意に関する法律では、法廷における取引(被告人、弁護人、検察官、裁判所間の合意)が導入される。この合意の最も重要な構成部分は自白ないし一部自白で、一定の減刑が認められる。合意は、審理において被告人と検事局が裁判所の提案に同意した場合に成立する。

  • ドイツ民法典改正では、リビング・ウィル規定が明記される。成人は、後に自分の意思を表示できない状態に陥った場合に、医師の治療を望むか、どのような治療を望むかを文書にて宣言することができる(リビング・ウィル宣言)。事前に本人の意思を文書で宣言した限りにおいて、リビング・ウィル(Patientenverfügung)は制限なしに拘束力がある。病気の種類や病期に依存しない。文書による宣言がない場合、あるいは本人のリビング・ウィルにおける決定が具体的な生命状況と治療状況に相応しない場合には、医師と世話人ないし任意代理人が推測される本人の意思を考慮して決めなければならない。医師と世話人ないし任意代理人が合意できない場合には、後見裁判所が決定する。(2009623日のニュースを参照)

  • 銃砲取締法では、銃砲所持者の取り締まりが厳しくなる。不法な銃砲は2009年末までに引き渡せば、罰せられない。大口径の銃砲の射撃を認められる年齢制限が現在の14歳から18歳に引き上げられる。電子銃砲登録が全国で導入される。

2009年7月21日)

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