オバサンの独り言

 

  日本では歴史的な政権交代が実現し、鳩山新内閣が誕生した。脱・官僚依存政治、天下りの根絶、税金無駄遣いの一掃など、国民は新政権に大いに期待している。ぜひ日本の政治を刷新していただきたい。

   それにしても民主党の圧勝ぶりというか、大物議員がバタバタと落選した自民党の惨敗ぶりは見事だった。有権者の鬱積した不満が一気に爆発し、自民党が長年安住してきた政権の座から引き摺り下ろされた。

   必ずしも民主党のマニフェストに賛成したわけではないが、ただただ自民党政権を潰すために民主党に投票したという有権者が多かったのではないか。有権者の「行政刷新」への強い願望と期待を示している。

   しかし、新政権に失望すれば、これらの有権者はすぐに民主党に背を向けるだろう。4年前の小泉首相下の郵政民営化総選挙と今回の総選挙を見れば明らかなように、今の有権者は熱しやすく冷めやすい。特に無党派層は気分屋だ。

   新政権がマニフェストに拘り過ぎて、民意と国益を見失うと、手痛いしっぺ返しを食うだろう。官僚の驕りが政治家の驕りにならないようにご注意を願いたい。まずはお手並み拝見だ。

   ところで、ドイツでも 9月27日に総選挙がある。だが、日本とは対照的に、ドイツの選挙戦は今一つ盛り上がらない。メルケル現首相(CDU)とシュタインマイヤー首相候補(SPD)の一回限りのテレビ討論会で一騎打ちを期待していたメディアは「対決(Duell)」が「二重奏(Duett)」に終わったと失望を隠せない。

   なぜ選挙戦が退屈なのか。最大の理由は現在の政党間の力関係にある。 

   選挙日が近づくにつれて、連立を目指すキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)は50%を下回り、下降傾向。同様に連立を目指す社会民主党(SPD)と緑の党は50%から程遠く、FDPSPDと緑の党との連立を拒否している。一方、SPDは連邦レベルでの左派新党(旧東独の社会主義統一党(SED)の後継党)との連立を拒否している。

   CDU/CSUFDP50%を上回らない限り、再びCDU/CSUSPDの大連立政権になる可能性が高い。

   元々、現政権は恋愛結婚ではなく、権力のための政略結婚だった。お互いに悪口を言い合い、喧嘩をして険悪な仲になっても結婚の実利をとって離婚しない夫婦のようなものだ。 

   これまで夫婦を演じてきたメルケル首相とシュタインマイヤー首相候補は大連立が念頭にあるため、お互いに批判を抑えている。このジレンマが「退屈な選挙戦」の背景にあるのだ。

   また、メルケル氏もシュタインマイヤー氏もプラグマティストで、シュレーダー前首相(SPD)のような扇動的な政治家でないことも影響しているだろう。今回の選挙戦ではポピュリズム傾向が抑制されている。

   ご存じのように、ドイツでは政党が色分けされている。CDU/CSUは黒、SPDは赤、FDPは黄色、緑の党は緑、左派新党は赤である。

   政党の色分けは古代ローマの戦車競走に遡るという。現在の政党の色分けでは、赤はフランス革命に由来し、革命のシンボル。黒は聖職者の僧服の色に由来し、罪の贖い、キリストの受難を意味する教会のシンボル。

   緑は植生、希望、成長を象徴する色で、環境とエコロジーの緑の党。ところが、古代ローマではネロ皇帝の色が緑だったとか。

   FDPの黄色と青は1972年のバーデン・ヴュルテンベルク州議会選挙戦における広告代理店の提案に由来するらしい。黄色は注意を喚起させる効果のある強烈な信号。青は客観性、公正さ、堅実のシンボルだそうだ。

   今後 4年間のドイツ政治の色は黒/黄になるのか、それとも黒/赤か。そのほかにも黒/黄/緑のジャマイカ連立、赤/黄/緑の信号灯連立、赤/緑、黒/緑、赤/赤/緑など色々な組み合わせが考えられるが、すべては有権者次第だ。

   選挙日まであと僅か。戦争や原子力発電、減税・増税などの有権者受けのいいテーマを持ち出して、国民の不安を煽り立てる発言が多くなってきた。

   有権者が一部政治家の大衆迎合的発言に惑わされることなく、冷静かつ理性的に意思を決定することを願っている。

   さて、ドイツの色は何色になるか・・・。

2009年9月22日)

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