オバサンの独り言

 

  858億ユーロという過去最高の新規債務を計上した2010年度予算案が連邦議会で審議されている。

   ショイブレ連邦財務大臣は、(巨額の借金をした後の)2011年は国も国民も厳しい節約を余儀なくされると警告したが、政府が計画している年間195億ユーロの減税には触れなかった。ドイツ経済は依然として「比類のない深刻な状況」にあり、今年と来年は失業者数の増加が予想されるという。

   経済専門家だけでなく、多くの国民も減税に否定的であるが、新政権は今年 1月 1日から 85億ユーロ規模の減税及び給付引き上げを実施し、今年はさらなる減税を計画している。

   世論調査によると、ドイツ市民の58%は連立政権が2011年に計画している約240億ユーロ規模の減税に反対しているという。賛成は38%に過ぎない。

   なぜ新政権はこれほどまでに減税にこだわるのか。経済専門家を納得させるほどに熟慮した、根拠のある景気促進策なのだろうか。

   ホテル宿泊料に対する付加価値税を19%から 7%に引き下げることに固執した自由民主党(FDP)とキリスト教社会同盟(CSU)が大手ホテルチェーンの共同経営者から多額の政治献金を受けていたことが明らかになった。

   また、連立与党が自動車会社の大株主や太陽光発電設備会社のオーナーから多額の政治献金を受けた後、その業界に有利な政策決定をしたという報道もある。

   「政治とカネ」の問題は何処も同じようである。真相の究明は難しいが、政治献金と政治の問題を有耶無耶にしてはなるまい。ロビイストを優遇する偏った政策は厳しく追及されなければならない。

   経済危機と連邦政府の減税というダブルパンチを受けて、地方自治体は苦境に追い込まれているという。小さな市町村は新年早々公共料金を引き上げ、公的サービスを削減し始めた。その財政状況を象徴するかのように、道路は暗くなり、温水プールは冷たくなっている。

   疾病保険組合も支出増加による赤字を埋め合わせるために今春から追加保険料を徴収することを検討している。前政権の疾病保険改革により被保険者の負担が軽減すると当時の政治家は宣伝していたが、負担は重くなるばかりだ。

   政治家が特効薬かの如く売り込む「○○改革」が税金の無駄遣いにすぎず、プラス効果がないという事例を挙げたら切りがない。「改革」が付く政策には要注意。最初から期待しない方がよい。いや、最悪の事態を覚悟しておいた方がよい。

   政治家の法螺吹きに何度となく失望させられてきた国民は身を守る処世術を心得た。政治家の言うことを信用しないことである。

   政権交代で政治不信からようやく脱したかに思われた日本では、国民の大きな期待を担って誕生した新政権が再び「政治とカネ」の問題と首相の指導力不足ゆえに国民の信頼を失いつつあるようだ。

   国民の期待と信頼が砂時計の砂の如く滑り落ちていく。日本、ドイツ、米国の新政権はそれを実感していることだろう。

   早急に適切な応急処置を施さないと命取りになりかねない。今年は大きな選挙を控えている。

2010年1月25日)

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