ドイツのニュース

介護業界における専門職員不足が深刻化

   

     連邦統計局と連邦職業教育研究所が発表したモデル計算によると、ドイツの介護業界では将来、専門職員不足が深刻化することが予想される。

   2025年には病院と介護施設で約152000人の介護職員(パートタイム勤務者も含む)が不足するという。これをフルタイム勤務に換算すると、約112000人のフルタイム勤務者が不足することになる。フルタイムの介護士の需要が約94万人であるのに対して、現在と変わらない枠条件の下では実際に従事する介護士は828000人にすぎないと試算している。

   職業教育を受けて資格を有する介護職員以外の職員、すなわち資格を持たない補助的労働力を投入しないという前提に立つと、状況はさらに厳しくなる。その場合は193000人のフルタイム職員が不足する。

   連邦職業教育研究所によると、すでに現在、高齢者介護/病人介護/それに類似した職業の資格を有する人の割合は介護部門に従事する人の56%にすぎないという。44%は介護専門の職業教育を受けていない補助職である。資格を有する介護士が52000人不足しているため、専門外の補助職員で補っているのが現状である。これまでは資格を持つ介護職員と資格を持たない介護職員で需要をカバーしてきたが、遅くとも2018年にはカバーできなくなる見通しである。

   専門家は専門職員不足の要因として人口統計上の変化を挙げている。高齢化社会では要介護者数が増加する一方で、少子化ゆえに被雇用者数が減少するからである。また、介護職の悪い労働条件も大きな要因となっている。

   介護士の職業教育を受けた人の 4分の 3だけが後に介護士の職に就いており、残りの人は精神的・肉体的にあまりきつくない、賃金の高い職業に替えている。今年8月1日から介護業界に法定最低賃金が導入され、旧東独が時給7,50ユーロ、旧西独が8,50ユーロである。資格を有する介護士の給与も他の業種より少なく、初任給は名目で月額約2000ユーロ。

   専門家は、介護職員不足に対する重要な対応策として、フルタイム勤務者の創出を提案している。2005年は1つのフルタイム職場に平均で1,3人が従事していた。専門家は旧西独の介護職員における比較的高いパートタイム勤務率を指摘する。パートタイム勤務者は全体の45%で、大半が旧西独である。旧東独ではフルタイム勤務率が旧西独よりも30%ほど高い。旧西独における週当たり平均労働時間が旧東独の水準に引き上げられれば、介護職員不足を(52000人から)34000人(フルタイム勤務)に抑えることができると試算している。

   賃金と労働条件の改善に加えて、仕事と家庭の両立の改善がキーポイントになると専門家は見ている。介護業界では、女性の割合が84%で、パートタイム勤務している女性介護職員の69%がパートタイム勤務の理由として「家庭」を挙げている。

   社会福祉団体は、介護の需要に見合った財源を政府に求めている。すでに現在、介護専門職員の不足が問題化しているという。介護士の労働条件を改善するとともに、要介護者の介護サービス時間を長くするためにも国からの援助を期待している。

   社会福祉団体は、保険料算定上限を引き上げ、算定基準を所得全体に拡大する社会市民保険の導入を提案している。現在、介護保険の保険料算定上限は月額3750ユーロで、それ以上の所得は保険料算定の対象にならない。

2010年12月22日)

戻る