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連邦通常裁判所、患者の自己決定権を強化

   

    連邦通常裁判所は 625日(金)、不治の病にかかっていて、もはや意思決定能力のない患者が事前に承諾(事前同意)を表明していた場合には、いつでも延命治療を停止することが認められるとする判決を下した。このような延命治療の停止は処罰すべき故殺ではなく、許容される消極的安楽死であるとしている。

   この判決は、リビング・ウィルにより延命治療拒否の意思を事前に書面で表明していなかった場合でも患者の意思、希望を尊重するもので、消極的安楽死と積極的安楽死の境界を明確にした。消極的安楽死(延命治療の停止)は患者の意思に相応するものであれば認められる。積極的安楽死、要求に基づく殺人は可罰的である。

   連邦通常裁判所は消極的安楽死の概念を厳密に規定している。患者の承諾(事前同意)は、栄養補給の停止による延命治療の中止だけでなく、希望しない治療を中止あるいは阻止するための「積極的な行為」(例えば、胃ゾンデの切断)も正当化する。

   行為ないし不作為の外面性だけに基づく不可罰的な安楽死と可罰的な殺人の区別は殺人と患者の承諾を伴う病死の相違を正当に評価していないという。

   200210月の脳卒中の後、昏睡状態にある母親が介護施設で人工栄養を与えられて延命されていたため、母親の意思に反する延命治療を中止させたい娘に胃ゾンデの管を切断するよう助言した弁護士が地方裁判所で執行猶予付き9ヶ月の有罪判決を下されたことから、弁護士が連邦通常裁判所に上告していた。

   この母親はリビング・ウィルを書いていなかったが、2002年9月に子供たちに「延命治療されることなく尊厳死したい」と語っていた。医師も延命治療の停止に同意していたが、介護施設がこれを拒んだため、娘が胃ゾンデを切断した。その2週間後に母親は死亡した。娘は無罪になったが、弁護士は9ヶ月の執行猶予付き有罪判決だった。

   2009年9月1日にリビング・ウィル法が発効したが、連邦通常裁判所は、2002年における患者の口頭による承諾(事前同意)は同法においても、行為が行われた時点で有効だった法律においても拘束力があると判断した。

   連邦法務大臣は、「連邦通常裁判所の判決は法的安定性をもたらす」と語った。「患者の意思に反する強制医療はない」という。

   医師会は、「今回の無罪判決は家族が独断で行動することへの特別許可ではない」と警告している。引き続き、患者の意思が決定的であるという。医師は延命治療の停止で捜査手続きを恐れる必要がなくなった。

2010年7月22日)

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