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連邦内閣、仲裁法案を閣議決定

   

     連邦内閣は112日(水)、裁判所以外における紛争解決の促進を目的とする仲裁法案を閣議決定した。ドイツで初めて、裁判所以外の仲裁手続と裁判所内の仲裁手続が法制化される。

   ロイトホイザー・シュナレンベルガー連邦法務大臣によると、仲裁手続の条文化は当事者の合意に基づく紛争解決を促し、争訟手続の改善、加速化に貢献する。多くの時間とお金と神経を必要とする裁判手続を回避することができる。また、長引く訴訟手続を回避できるので、裁判所の負担軽減に寄与する。同大臣は、「正義の女神は依然として天秤を手にしているが、刀を鞘に収めたままであることが多くなる」と語った。

   仲裁手続の利点は敗者がいないことで、当事者が合意して初めて紛争解決が可能になる。市民は、紛争問題を自己責任の下に決定する法的手段を得る。国は仲裁手続の法的枠組みを規定するが、仲裁人の認可については関連団体の管轄とする。

   仲裁法案によると、仲裁手続にはいつくかの形態があり、裁判手続に依存することなく行われる裁判所以外の仲裁手続、訴訟中に裁判所以外で行われる仲裁手続、訴訟の枠内で裁判官が仲裁人として行う裁判所内の仲裁手続(但し、この裁判官は訴訟事件を自ら決定しない)がある。仲裁手続は民事裁判所、労働裁判所、家庭裁判所、社会裁判所、行政裁判所で可能になる。

   仲裁手続の前提条件は、当事者が任意で参加し、紛争事件について自主的に決定することである。

   仲裁手続における守秘を市民に保証するために、仲裁人は守秘を義務付けられる一方で、民事訴訟法において法的証言拒否権を取得する。当事者が仲裁手続で得られた合意を執行するために、執行宣言することができる。当事者が合意に行った場合には、例えば民事手続では区裁判所で執行宣言することができる。

   仲裁人は独立かつ中立の立場にある第三者でなければならない。仲裁人は紛争解決の提案をすることができるが、自ら決定することはできない。従って、仲裁手続に参加した裁判官はその事件を自ら決定することはできない。仲裁人として関わる裁判官は他の仲裁人以上の権限を有しない。和解の調書を作成したり、訴額を確定することはできない。仲裁人としては裁判官、弁護士、心理学者、税理士などが挙げられる。

   仲裁人は職業・継続教育を義務付けられる。仲裁人資格の付与は国ではなく、職業団体の民間制度に委ねる。仲裁人認可制度が仲裁人の質を保証する。

   8つの連邦州における裁判所のモデルプロジェクトでは、約5000件の仲裁手続の内、約73%が合意に至ったという統計結果が出ている。仲裁手続は特に、家族、長期にわたるビジネスパートナー、隣近所の人との紛争において有意義であるという。

   アレンスバッハ世論調査研究所の世論調査結果によると、市民の約半分は任意による仲裁手続を裁判手続の代替としてポジティブに見ており、訴訟件数が減少することを期待している。

   それに対して、ドイツ弁護士協会は、裁判官による仲裁により、司法の本来の任務が背景におしやられること、裁判手続がかえって長くなることを懸念している。

   ドイツ商工会議所連合会も「法案は詳細においてまだ修正が必要だ」という見解である。特に、当事者と裁判所が、仲裁人が信頼できる適任者であるか否かをどのように判断すべきかという点が明確でないと指摘している。

   裁判所以外における和解調停は裁判の高額な費用と長い訴訟期間を回避できるうえ、1回の判決が長年のビジネスパートナーとの関係に後まで残す影響を避けることができるので、企業の仲裁手続への関心は高まっているという。特に中小企業が商工会議所の仲裁機関を利用している。

2011年1月25日)

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