オバサンの独り言

 

   2011年は東日本大震災と福島原発事故、ユーロ危機が世界を揺るがした年だった。

    情報が少しずつ開示されるにつれて、福島原発事故も欧州債務危機も「想定外」ではなく、「人災」であることが明らかになってきた。事態の収束に向かってはいるものの、まだまだ予断を許さない状況にある。

    野田総理は「発電所事故そのものは収束した」と述べたが、事故収束宣言など論外だ。政府と東電の危機意識の甘さには驚くばかりである。

    政府が正確な情報を把握していないためか、的確な安全対策がとられていない。依然として健康の不安、食の不安がある。現在の暫定規制値は高すぎるし、検査の信頼性も疑わしい。除染作業も賠償も徹底していない。原発周辺住民が帰宅できる見通しは全くたっていないのだ。

    政治家がカメラの前で福島産や茨城産の野菜や肉を食べて見せてもパフォーマンスでしかない。放射線量の検査を徹底して、食物に表示する方が有効な風評被害防止対策だと思う。安全規制値を上回る食物は絶対に流通させないという厳しい姿勢を国民に示してもらいたい。

    そして、農家にその賠償をすることが東電と政府の責任なのである。風評被害を口実に、放射能に汚染された食物を国民に食べさせることは被災地支援を履き違えている。

    厳しい現実を伝えることなく、あいまいな希望的観測だけを示してその場しのぎをする東電と政府に国民は不信感を抱いているのだ。

    欧州連合でも危機管理の甘さが露呈した。政府も国民も危機意識が薄く、財政規律を無視してきた。特にギリシャの放漫財政には呆れて物が言えない。それを見て見ぬふりをしてきたEU諸国、特にドイツとフランスの責任は重大だ。

    欧州連合首脳会議は財政規律の強化策で合意したが、ユーロの行方はまだまだ不透明である。財政破綻国の国民が本気で財政立て直しをする覚悟があるのかどうかも疑わしい。「どうせEUが助けてくれる」と思われては困る。

    EU諸国は「規律は破るためではなく、守るためにある」ことを肝に銘じるべきだ。守らなければ意味がない。次の失敗が起こらないコントロールシステムが求められている。

    日本でも欧州連合でも政府と当事者が徹底的に検証して、原因究明を行い、次の「人災」を未然に防ぐための対策を講じてほしいと切に願う。

    日本漢字能力検定協会が発表した2011年を表す漢字は「絆」だった。日本中が「絆」の大切さを再認識したからだろう。外国からも温かい「絆」のメッセージがたくさん届いた。

    しかし、被災地の復興は始まったばかり。被災者の生活は依然として厳しい。福島原発事故の人体、自然界への影響は未知数だ。私たちはこれからも被災者と共にあることを忘れてはならない。

    欧州連合は財政破綻国の尻拭いをする覚悟があるのかどうか試されている。2012年は日本にとっても欧州連合にとっても「絆」の真価が問われる年になるだろう。

    日本の2011年は「タイガーマスク運動」という明るいニュースで始まった。運動が一過性に終わるのではないかと懸念されていたが、この冬もタイガーマスク賛同者が日本全国に出現して、善意を配っているようだ。

    今年は試練の年だった。しかし、私たちは助け合い、支え合う、思いやりの心を取り戻した。連帯の精神が蘇った。タイガーマスクが再登場して、2011年が終わろうとしている。

    2012年が幸多き年でありますように。

2011年12月30日)

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