オバサンの独り言

 

   ドイツの2010年の出生率が前年の1,36から1,39に上昇した。二人目、三人目を産む女性が増えていることは喜ばしい。今後は若いカップル、特に女性が「子供のいる家庭を築こう」と決心できる社会環境の整備が家族政策のポイントになる。

    連邦統計局によると、人口に占める18歳以下の未成年者の割合は16,5%で、EU内で最も低い。未成年者数は2000年以来210万人減少して1310万人。2000年は未成年者の割合が18,8%だった。フランス(22%以上)や英国、オランダ、スカンジナビア諸国(それぞれ20%以上)を大きく下回っている。

    専門家は、出生率が安定し、年間10万人の移民増加(移入民と移出民の差)が確保されても未成年者の割合は2030年に15%、2060年に14%に低下すると予想している。

    ドイツ政府は両親手当の導入、3歳未満児の保育施設の拡充を柱とする家族政策を実施しているが、与党内では多額の財源を必要とする両親手当の効果を疑問視する声が再び聞かれ始めた。働く母親と父親、特に大卒女性を支援する両親手当に対する保守系政治家の不満は根強い。キリスト教民主同盟(CDU)のカウダー議員団長は「2013年で両親手当を停止し、家族政策全体を見直すべきだ」と発言している。

    しかし、育児休業する父親が増えていることは事実で、父親の育児休業が社会に受け入れられるようになった効果は大きい。職場環境の改善は始まったばかりだが、決定的な第一歩が踏まれたのは確実である。

    両親手当の効果はすぐに出生率や出生数に現れてこないが、仕事と育児の両立のための意識改革は着実に進んでいる。もう後戻りはできない。国の未来は子供たちにかかっているのだ。近視眼的でない、長期的な展望に立った家族政策を期待したい。

    一方、日本では民主党政権の看板政策だった子ども手当が廃止され、自民・公明前政権の児童手当が復活することになった。

    民主党の「社会全体で子育てする」という理念に賛同できるだけに、マニフェストに拘り過ぎた勇み足の失敗は残念である。十分な財源を確保できないまま、理想だけが独り歩きした政策がいつか行き詰ることは最初から予想できたことではあるが・・・。

    野党時代が長すぎた民主党がマニフェストに掲げた様々な政策にみられる理念と現実の大きな矛盾は明白だったし、メンツのために政策の修正を拒んだツケは大きかった。

    莫大な債務を抱える日本が限られた財源の中から子育て支援をするのであれば、最初から大風呂敷を広げるのではなく、根気強く段階的に導入していくべきだったと思う。新しい内閣は子ども手当の失敗を活かし、本来の理念を断念することなく、現実性のある効果的な支援策を実現してほしいと願う。

    東日本大震災で膨大な復興財源が必要になった日本がバラマキ政策をする余裕はない。権力争いをしている暇もないはずだ。この緊急時に与党内の権力争いなど以ての外だ。巨額な財政赤字に多大の責任がある自民党にも真摯な反省と建設的な改善が見られない。

  今の日本の政治を見ていると、誠に恥ずかしい限りである。外国における日本の政治への信頼は急落の一途を辿っている。ドイツメディアの論評を読むたびに情けなくなる。

    米格付け会社ムーディーズは日本国債の格付けを「Aa2」から「Aa3」に1段階引き下げた。「頻繁な政権交代が一貫した長期的な経済・財政運営を困難にしている」と指摘している。 Aa3」はイタリヤやスペインを下回り、中国やチリと同水準である。先進国では最低ランクになるという。日本では「国債の9割超を国内勢が保有」しており、事情が異なるとはいえ、このまま債務を増やし続けていいのか。

    福島原発事故のように、事が起こってから「想定外だった」と言い訳しても後の祭りだ。いつ巨大な津波に襲われるかもしれない。欧州や米国の債務問題は他人事ではない。あらゆるケースを想定して、最優先で財政再建を図らなければならない。日本の政治家の危機感の欠如には驚くばかりである。

    20世紀の政策では目まぐるしく変遷する21世紀の競争に生き残ることはできない。20世紀の先進国の政治家には20世紀の負の遺産に対する冷静な危機管理と新しい時代に向けての発想の転換が求められているのである。

2011年8月26日)

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