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出生率は1,39/「良い母親」の理想像がブレーキに

   

    連邦人口研究所の調査結果によると、2010年はドイツの出生率が1,39であった。欧州で最も低かったのはラトヴィアで1,17、最も高かったのはアイスランドで2,2。アイルランドが2,07、トルコが2,04、フランスが2,01

    フランスでは長年にわたり、家庭と仕事を両立させる政策が一貫して実施されてきた。北欧では男女同権政策が出生数にポジティブに影響しているという。

    また、調査では、子供のいる家庭に対するドイツ人の考え方が他国と大きく異なっていることが明らかになった。ドイツでは「子供は人生の幸福だ」という確信が薄く、親であることに対する社会的評価も低い。

    子供中心の生活が親の義務とされており、この大きな社会的プレッシャーと仕事と家庭の両立の困難が親になることを非魅力的にしている。子供のいる人生への不安が極めて大きいと、専門家は分析している。

    「今後3年間に子供が生まれたら、生きる喜びと満足感が増すだろう」と考えている人は、子供のいない18歳~50歳のドイツ人の45%に過ぎなかった。すでに子供のいる人では、「もう一人子供ができたら生きる喜びが増える」と回答した人は17%だけだった。

    フランスでは、子供のいない人の4分の3が、すでに子供のいる人の半分が「生きる喜びが増える」と回答している。

    ドイツでは、子供を作らないこと、子供が少ないことは少なくとも部分的に本人の希望でもあると、専門家は見ている。

    また、低い出生率は仕事と家庭の両立におけるジレンマにも起因しているという。特に旧西独では未だに「家で子供の世話をする」という伝統的な「よい母親」の理想像が強く浸透しているため、職業に就く女性が子供を産まない傾向にある。依然として、働く母親は「薄情な母親(Rabenmutter)」と見なされている。

    「母親が外で仕事をしていると、子供が悲しい思いをする」と回答した人は旧西独で63%、旧東独で36%だった。

    特に旧西独では、仕事か子供かを決める場合に、保育施設の不足だけでなく、「良心的に保育所に預けることができない」という本人の考え方が影響しているという。旧西独では多くの人が「母親が働いていると子供が悲しむ」、「保育施設に預けると、子供の成長に問題がでてくる」と考えている。

    ドイツでは、子供がいることは親の社会的評価の向上にはつながらない。「今後3年間に子供ができたら、あなたに対する社会的評価が高まると思うか」という質問に「はい」と答えた人は子供のいない人の17%に過ぎなかった。すでに子供のいる人では5%だけだった。子供が2人以上いる人の13%は、「もう一人子供が増えると、社会的評価が下がる」と考えている。

    それに対して、フランスでは子供のいない人の33%が「社会的評価が高まる」と回答している。

    1964年~1968年に旧西独で生まれた女性の24%には子供がいない。大卒女性では31,6%。「これは国際比較でも極めて高い割合だ」と、専門家は指摘する。

    学歴が低ければ低いほど、子供が多い。職業教育修了資格のない女性の出生率は平均で1,8で、子供のいない人は17,4%、子供が3人以上の人は32%である。

    旧東独の女性の出生率の方が旧西独より高いが、経済的理由から子供は一人だけにする傾向が見られる。

    専門家によると、出生率を高めるためには子供手当や両親手当の給付、保育施設の整備だけでは不十分であり、魅力的な男女同権政策と母親像の適切な修正が不可欠であるという。
    連邦家庭省のスポークスマンは、「政治は枠条件を作ることはできるが、人々の不安を取り除くことはできない。これは社会全体の問題である。経済界も仕事と家庭の両立を望む従業員のためにもっと魅力的な職場環境を整備する義務がある」と語った。

2012年12月21日)

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