ドイツのニュース

女性の年金は男性の半分

   

    経済協力開発機構(OECD)の調査結果によると、ドイツでは賃金における男女格差が極めて大きい。調査した34カ国のうち、ドイツよりも男女格差が大きかったのは韓国と日本だけだった。

    ドイツでは女性の賃金は男性よりも平均で21,6%少ない。韓国は38,9%、日本は28,7%。OECD平均は16%。

    年金における男女格差はさらに大きくなる。ドイツでは、女性の年金は男性の年金より平均で49,9%少ない。34カ国の中で男女格差が最も大きかった。ドイツの年金生活者の3分の2は女性で、その内の10%は貧困者である。

    大きな男女格差の要因としては女性のパートタイム勤務が挙げられる。ドイツでは、特に子供がいる場合には、パートタイム勤務する女性が他国よりも多い。女性のパートタイム勤務の割合は38%で、男性は8,5%。就業している25歳~54歳の母親の62%はパートタイム勤務である。フランスでは26%に過ぎず、就業している母親の3分の以上がフルタイム勤務している。

    パートタイム勤務している人は「第二級の従業員」とみなされ、責任のある仕事が少なく、昇進のチャンスも少ない。少ない労働時間と低い所得ゆえに年金も少ない。

    パートタイムの女性が多いのは、「男が一家の稼ぎ手」という社会像にも起因している。ドイツには未だに、子供のいる共働き夫婦に不利な租税・社会制度があり、多くの女性は専業主婦である。

    OECDはドイツの「夫婦分割課税」と「家庭保育手当」がこの傾向を促すと指摘する。ドイツは国内総生産の2,8%を家族政策に充てており、OECD平均の2,2%を上回っているが、その大部分が税制上の優遇措置、特に夫婦分割課税に充てられているという。

    また、OECDは、親が負担可能な保育施設が不足していることを批判する一方で、父親の育児休業を促す両親手当の改革を高く評価した。

    ドイツでは上場企業の取締役会と監査役会に占める女性の割合が3,5%に過ぎない。OECD平均は10%。管理職でも女性の割合が28%に過ぎない。そこでOECDはクオータ制の導入を提案している。

    企業の首脳部に登りつめた女性でもその報酬は男性よりOECD平均で21%少ない。昇進するほど報酬の男女格差も広がっている。連邦統計局によると、ドイツでは2010年は管理職女性の所得が管理職男性よりも30%少なかった。

    その要因としては、報酬の交渉で女性の方が男性より要求しないこと、女性は大企業ではなく中小企業の首脳部に多いことなどが挙げられる。

    20年前に比べると、職業資格における男女格差はほとんどない。ドイツでは25歳~34歳の年齢層における大卒ないしマイスターは女性の方が多い。しかし、OECDによると、女性は大学で勉強した専門の職業に就かずに、教師になる人が多いという。

    典型的な女性の職種(診療助手、介護士、美容師、幼稚園の先生など)は賃金が低く、昇進のチャンスも少ない。しかし、これらの職種でも男性の方が管理職に就く人が多く、所得も多い。

    ドイツの出生率は1983年以来1,5%を下回っている。第一子の出産年齢は平均で30歳。英国と並んでOECDで最も高い。子供が成人するまでの母親の所得は平均で、子供のいない女性の所得の半分以下であるという。

2012年12月21日)

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