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連邦内閣、患者権利法案を閣議決定

   

    連邦内閣は523日(水)、患者の権利を改善する患者権利法案を閣議決定した。同法は2013年1月1日に発効予定。

    同法案の概要は下記の通りである。

    * 治療契約が民法典で明確に保証される。患者と医師/その他医療従事者(治療師、助産婦、精神療法士、理学療法士など)の間の契約関係が規定される。患者に分かりやすく、広範に情報(必要な検査、診断、治療などに関する情報)を提供しなければならない。法定疾病保険金庫が負担しない治療の費用を患者に指摘しなければならない。

    * 医師に説明義務が課せられる。治療・手術前に患者に具体的な治療、リスクについて広範に説明しなければならない。患者が十分に熟慮できるように、適時に個人的に説明しなければならない。書面による説明だけでは十分ではない。

    * 医師には記録義務も課せられる。患者のカルテを完全かつ注意深く記録しなければならない。患者にはカルテを閲覧する権利がある。記録に欠如がある場合、不完全である場合には、訴訟において、記録されていない治療は施されていなかったと推定され、医師の不利になる。

    * 医師責任が透明化される。「単純な」医療過誤の場合は従来通り、医療過誤であること並びにその医療過誤が損害の原因であることを患者が立証しなければならない。「重大な」医療過誤のような特定のケースでは、医師に立証責任がある。

    * 法定疾病保険金庫が給付決定の期限などの手続規則を守らなかった場合には、被保険者はかかった費用を請求できる。

    * 疾病・介護保険金庫は医療過誤に対する被保険者の損害賠償請求を援助することを義務付けられる。例えば、立証のための医療鑑定サービス。

    * 医療機関におけるリスクマネジメント・過失予防システムが促進される。医療施設における専門的な品質管理には患者のための苦情マネジメントも含まれる。

    * 患者参加、患者支援団体の参加が強化される。

    連邦参議院は7月6日(金)、連邦政府の患者権利法案の修正を求めることを決定した。原則的に同法案に同意するが、患者権利保護がまだ不十分であるとしている。特に、医師/医療機関の治療費用請求における透明化(診断、治療、医薬品とその費用を記載した患者領収書発行の義務付け、歯医者の請求書のコントロール)、患者相談の改善、患者カルテの保管期間を10年から30年に引き上げること、患者が希望すれば患者に関する情報を文書でも提示することなどを求めている。

    野党は、「同法案はこれまでの判例をまとめたものにすぎず、進歩がない」と批判している。それに対して、医師会は歓迎している。

2012年7月19日)

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