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医療過誤件数、5年連続で増加

   

    連邦医師会連合会が発表した鑑定人委員会及び調停所の統計によると、2011年は鑑定人委員会及び調停所に申し立てられた苦情は1万1107件で(2010年は1万1016件。前年比0,83%増)、5年連続で増加した。

    増加の要因としては、医師会の鑑定人委員会及び調停所が一般に知られるようになってきたこと、社会の高齢化ゆえに外科手術件数が増えていることなどが挙げられる。

    申し立てられた苦情のうち7452件に鑑定結果が出た(2010年は7355件。1,32%増)。

    鑑定結果では、「医療過誤ではない」と鑑定されたケースは5165件(69,3%)、医療過誤と鑑定されたケースは2287件(30,7%)だった。その内、1901件(25,5%)が「医療過誤があり、障害との因果関係がある。従って、患者に損害賠償請求権がある」、386件(5,2%)が「医療過誤はあったが、障害との因果関係はない。従って、患者に損害賠償請求権がない」。

    障害と因果関係のある医療過誤のケース(1901件)では、すべてのケースで当事者双方が合意したわけではない。86%のケースでは患者が躊躇せずに賠償責任保険会社から損害賠償金を受け取った。3%のケースだけが裁判所に訴訟を提起した。11%のケースでは患者が損害賠償金を望まなかった。

    2011年は99人の患者が医療過誤が原因で死亡した(2010年は87人)。721人は医療過失が原因で継続的な障害を被った。その内の約200人は重度障害である。

    病院の方が開業医の診療所よりも医療過誤件数が多い。複雑な手術が重度障害の原因になっている。メディカル・エラー・レポーティング・システム(MERS)により、医師会の鑑定人委員会及び調停所の統計結果が全国の統計データバンクに収集されて分析・評価されている。

    医師会の鑑定人委員会及び調停所で鑑定されたケースは医師責任が疑われるケース全体の4分の1強に過ぎない。残りのケースは賠償責任保険会社、法定疾病保険金庫の医療サービス機関、裁判所で扱われている。

    医療過誤のために訴訟を起こす患者は1,5~3%に過ぎない。訴訟を起こさない理由としては、「医師との関係を悪くしたくない」、「患者の権利を知らない」、「訴訟を起こす勇気がない」、「患者に立証責任がある」などが挙げられる。

    医療過誤による実際の死亡件数は医師会の統計よりもはるかに多いと見られている。患者、医師、疾病保険、消費者団体の代表者から成る「患者の安全のための行動連合」によると、病院だけでも約17000人が医療過誤が原因で死亡していると推定される。

    また、連邦保健省は年間4万件~17万件の医療過誤があると推定している。若い世代の医師は医療過誤のテーマと積極的に取り組む傾向が見られるという。

2012年7月19日)

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