オバサンの独り言

 

   連邦憲法裁判所が同性カップルの承継的養子縁組を認める基本判決を下した。

    今回の判決は共同養子縁組には触れていないので、夫婦と同性カップルが完全に平等になったわけではないが、極めて大きな意味のある決定だ。

    これまで夫婦と同性カップルの同権に否定的だったキリスト教民主同盟(CDU)も方向転換を表明しており、婚姻と登録ライフパートナーシップの同権化に向けての様々な法律改正が進展するだろう。

    判決理由にもあるように、ドイツの社会は大きく変わった。

    男性間の性行為に刑罰を科す刑法典第175条は1872年1月1日に発効した。21歳以上の男子の同性間の性行為が犯罪ではなくなったのが1969年6月25日、18歳以上の男子の同性間の性行為を犯罪としない法案が可決したのが19731123日、連邦通常裁判所が同性カップルを「公序良俗違反ではない」とする判断を下したのが198410月3日、刑法典から第175条が完全に削除されたのが1994年6月11日である。

    2001年8月1日には登録ライフパートナーシップ法が発効した。但し、所得税法、養子縁組、年金請求権などにおいて、夫婦と同性カップルはまだ完全には平等に扱われていない。

    2005年1月1日からは登録ライフパートナーシップの同性パートナーの継子養子縁組(パートナーの実子に対する養子縁組)が認められるようになった。

    そして、2013年2月19日、登録ライフパートナーシップの承継的養子縁組(パートナーの養子に対する養子縁組)も認められるようになったのである。婚姻と登録ライフパートナーシップの同権化が大きく前進した。

    判決理由では、「婚姻と登録ライフパートナーシップは同じように責任共同体である。性的指向だけで差別することは憲法上の理由から認められない」ことを前提とした上で、「基本法第6条は「母親と父親」ではなく、性を特定しない「両親」としている。基本法の立法者は男性と女性を考えていたのかもしれないが、同性愛に対する社会の見方が著しく変わり、同性カップルも「両親」として見なすことができるようになった」としている。

    また、「養子縁組は、婚姻においても登録ライフパートナーシップにおいても同様に、養子に養育、扶養権、相続権などにおける法的保障を与えるので、養子の幸せを妨げるものではなく、その幸せに適うものである。登録ライフパートナーシップの保護された関係は夫婦の関係と同じように養子の成長を促すことができる。養子縁組の可能性の拡大は養子にとって利点だけをもたらす。重大なのはパートナーが同性か異性かではなく、その継続的な法的関係であり、拘束力のある責任能力である」という。

    連邦法務省の委託で行った調査でも、「子供の幸せは両親の性的指向が重要なのではなく、むしろ、両親から受ける愛情、刺激、励まし、人生観などが決定的である」という結果が出ている。

    裁判官が指摘するように、以前は婚姻や両親は男性と女性から成るのが当然であったため、「両親」という概念を定義する必要がなかった。しかし、社会が変わり、それまでの当然が当然ではなくなったのである。

    とはいうものの未だに同性カップルに対する偏見は大きい。同性カップルの家庭で育つ子供への影響については賛否両論がある。同性カップルは社会に受け入れられるようになってきたが、同性カップルが子供を育てることに対する反発はまだ根強い。今後、法律改正に向けて活発な議論になることだろう。

    連邦憲法裁判所は判決理由の中で、「登録ライフパートナーシップを婚姻よりも不利に扱うためには重大な理由が必要であり、「夫婦の特別な保護」の援用だけでは十分な根拠にならない」としている。

    婚姻と登録ライフパートナーシップが様々な領域において平等に扱われるようになることを歓迎したい。

    家族の形態が多様化している。立法も社会の変化に適応しなければならない。特に少子高齢化の時代には社会全体で子供たちを育てていく環境の整備が必要不可欠である。

    従来の政策では夫婦単位で様々な特別保護・優遇措置がとられていたが、これからは家族(養育する親と子供)単位にするのが妥当だと思う。

    政治はこの社会の要請にどう応えるのだろうか。

 2013年2月26日)

戻る