オバサンの独り言

 

   最近、私の周りにも定年退職者や早期退職者が多くなった。

    昨年末で早期退職した知人から興味深い話を聞いた。

    彼が勤めていた会社には従業員のためのフィットネス施設があり、退職者も利用することができる。午前中の利用者はもちろん年金生活者ばかりである。

    トレーニングプログラムがあって、フィットネスマシン1から2、3と順番に回っていくシステムになっている。1回のトレーニング時間も決まっているので、スムーズに流れて行く。

    ところが、その順番を守らずに、空いているマシンに突進して勝手に使い始める年金生活者が多いのだそうだ。注意すると、怒ったり文句を言ったり・・・。現役の職員が利用する時間帯ではそんな経験をしたことがないという。

    更衣室でも自分の持ち物をベンチに広げ、混んでいようがいまいがお構いなし。まるで家にいるかのように振舞う。その厚かましさにはあきれるばかりだと知人がこぼしていた。

    規律を守らない自分中心の行動は女性よりも男性の方に見られるというから興味深い。中高年のおばさんよりもひどいらしい。

    職業生活では規律を守り、他の人達と協調して働かなければならない。常に自制心が求められる。だが、「毎日が日曜日」の生活ではその緊張感がなくなってしまう。知人は自分もこうなってしまうのかと思うとぞっとすると言っていた。

    この話を家の者にしたら、以前に読んだことがあるという新聞記事の話をしてくれた。

    ある老女が市電に乗り、席に座ろうとしたが、すでにその席には他の老女が座っていた。乗り込んできた老女が「そこは私の座席ですよ。私はいつもその席に座るんだから、あんたは他の席に座ってちょうだい」と言ったが、座っていた老女はその席を譲ろうとしなかった。口論から取っ組み合いの大げんかになったため、他の乗客が警察を呼んだのだそうだ。

    この話には落ちがついている。その市電はがらがらだった。

    年を取ると子供に戻るといわれるが、周りの高齢者を見ているとそれを実感することが多い。自分の思い通りにならないとすぐに怒り、自制が利かない。規律を守れない。状況を察することができない。礼儀や慎み、社会生活の中で養われてきたものが砂時計の砂の如く少しずつ失われていく。

    老女の話を聞いて大笑いしたが、10年後、20年後にも笑えるだろうかとふと思った時、もはや笑い話ではなくなっていたのである。

 2013年3月26日)

戻る