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ドイツの年金は他のEU諸国よりも少ない

   

    経済協力開発機構(OECD)の統計によると、ドイツの年金請求権は法定年金受給開始年齢、年金受給期間、年金額においてOECD平均を下回っていることが明らかになった。この統計は2010年のデータに基づいている。

    就業期間における収入に対する年金の割合を示す補償率は年金請求権の価値を算定する際の重要な基準である。この補償率のOECD比較を見ると、スペインでは平均所得の男性が65歳で定年退職した場合の実質補償率が約84%、イタリアが約76%で、ギリシャは110%以上だった。ギリシャでは平均で所得よりも年金の方が多いことになる。

    この補償率には年金算定の方法も影響している。ドイツでは年金額は就業年数に依存するが、スペインでは最後の15年間の所得が、ギリシャでは最後の5年間の所得だけが基準となる。

    南欧諸国の実質補償率はOECD平均(69%)を大きく上回っている。それに対してフランスは約60%で、OECD平均を下回った。ドイツは58%で、最下位グループだった。ドイツよりも低かったのはスウェーデン、英国、アイルランド。ドイツでは実質補償率がさらに低下する見通しである。

    また、ドイツでは定年退職するまでの就業年数が平均で他のEU諸国よりも長い。欧州委員会の統計部局(Eurostat)によると、2010年のデータに基づく統計では、EU平均就業年数が34,5年だった。最も長いのはスウェーデンで40,1年、最も短いのはハンガリーで29,3年。スペインは34,5年、フランスは34,3年、ギリシャは32,1年、イタリアは29,7年。ドイツは36,8年だった。2011年の統計では37,4年に上昇している。

    年金を満額受給するために必要な就業年数はフランスが41年、ギリシャとスペインが35年、イタリアが40年、ドイツが45年だった。

    ドイツでは2029年までに段階的に法定年金受給開始年齢が67歳に引き上げられるが、満額受給のための就業年数は45年で変わらない。

    EU諸国でも法定年金受給開始年齢を引き上げる傾向が見られる。スペインは2027年までに段階的に67歳に、アイルランドは2028年までに68歳に、イタリアは2018年までに66歳に引き上げる計画である。フランスは従来通り62歳で変わらない。

    しかし、実際には法定年金受給開始年齢よりも早く年金生活に入っている。ドイツでは55歳~64歳の年齢層でまだ就業している人は全体の59,9%、フランスは41,5%、ギリシャとイタリアは40%以下である。

    実際に年金受給を開始する年齢はフランスが60歳以下、ドイツは63,5歳だった。ドイツでは実際の年金受給開始年齢が上昇傾向にある。イタリアとスペインでは中高年者の就業率が大きく上昇すると予想される。

    年金受給期間を見ると、男性ではフランスが平均で21,7年、イタリアが22,8年、ギリシャが24年でOECD平均(18,5年)を大きく上回ったの対して、ドイツは17年でOECD平均を下回った。

    女性ではフランスが平均で26,5年、イタリアが27,4年、ギリシャが27,1年でOECD平均(23,3年)を上回った。ドイツは20,7年。

    しかし、OECDは、多くのEU諸国では財政難ゆえに従来の年金制度を維持することができないと予想している。フランスとイタリア(年金制度が国内総生産の15%を占める)でも年金受給開始年齢の引き上げなどの抜本的な年金改革が必要になると見ている。

2013年7月19日)

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