オバサンの独り言
日本に帰るたびにサービスの良さに感心する。 レストランに入れば水かお茶、お手拭きが出てくる。荷物を置くかごまで持ってきてくれる店もある。チップがないのに、給士のサービスはドイツとは雲泥の差だ。店員さんもみんな親切に応対してくれる。 日本に住んでいる人にとっては当たり前なのだろうが、長年ドイツに住んでいると、至れり尽くせりのサービスに感激してしまう。 今回は特にコンビニの優れた利便性、そのサービス精神が目に付いた。狭い店内には日常生活の必需品が揃っている。お弁当やお惣菜、飲物の種類も豊富で、新鮮な野菜や果物もある。しかも若者だけでなく中高年者にも対応できる品揃えだ。 店内調理サービス、飲食できるコーナー、宅配便取り扱い、ATM、コピー、公共料金の支払い・・・と、消費者ニーズに敏感に反応して、常に利便性を向上している。お見事としか言いようがない。カフェに劣らない味で低価格のコンビニコーヒーが人気上昇中だとか。 最近はコンビニを利用する高齢者が増えていると聞いたが、納得できる。大きなスーパーでウロウロ捜し回るよりも近所のコンビニの方がずっと便利だ。棚の高さが低く、高齢者でも手が届くし、見渡しがきく。食品・日用品・新聞雑誌なんでもあり、一人暮らしに便利な少量パックになっている。 運転できない、あるいは運転できなくなった高齢者は一度に大量の買物ができない。近所のコンビニなら頻繁に歩いていけるから、いい散歩にもなる。 コンビニがさらに知恵を絞って高齢者向け商品・サービス(配達など)を充実させれば、一人暮らし高齢者にとってコンビニは外との接点、一つのライフラインになるのではないだろうか。 調理済み食品はコンビニだけでなく、スーパーでも種類が豊富で、一人暮らしの人に便利な少量パックが多くなっていた。 高齢者向けメニューや健康食メニューを宅配するサービスも増えているという。栄養のバランスがとれ、味も価格も「まずまずだ」と知人が言っていた。日本は消費者ニーズへの対応が実に早い。 消費者の利便性を追求するサービス精神、工夫とアイディアに欠ける頑固なドイツ人には日本の多種多様なサービスは想像もつくまい。 ドイツ人はサービス音痴で、サービスを軽視する傾向にある。かなり改善されてきたが、まだまだお粗末だ。 営業時間、労働時間、賃金、労働条件など、労働者の権利が最優先され、消費者ニーズやサービスの利便性は二の次になる。宗教上の理由から日曜祭日の営業は禁止されている。だから、コンビニも宅配便もドイツにはない。 また、新しいものに対する拒絶反応が極めて強い。ハードルが高く、すぐには飛び付かない。マクドナルドやアマゾンがドイツ市場に参入した時がよい例だ。最初は頑なに拒絶するが、一度その利点を納得すると、急速に普及する。 昨年、法律が改正され、ようやく高速バス市場が開放された。今後の展開が楽しみだ。 では、ドイツが日本より優っているサービスってなんだろうと考えてみたが、なかなか思いつかない。ドイツの強みはサービスではなくインフラ整備なのではないか。 例えば、バリアフリー化が日本よりずっと進んでいる。駅のエスカレーターやエレベーターの整備は日本の比ではない。ノンステップバスも多く、ベビーカーを押す人も高齢者も身体障害者も公共交通機関を利用し易い。この点では日本は実に不便、不親切だ。 自転車道も整備されている。日本では歩道でさえも自転車とぶつかるんじゃないかと危なくてのんびり歩いていられない。高齢者には本当に危険だ。自転車に乗る人も狭い車道で常に危険にさらされている。 また、安全性に対する考え方もドイツ人の方が徹底している。ドイツの技術検査協会(TÜV)は世界的に有名だ。 ドイツは啓蒙と法律の国だと思う。まず頭で考え、納得したら規則を作って実行する。ドイツはカント、ヘーゲル、マルクスの国なのである。 日本とドイツ、それぞれに長所と短所がある。国民性も文化も歴史的背景も違う。しかし、今や世界はグローバル化している。少子高齢化という共通の問題を抱える両国には相手から学ぶ柔軟性と創造性が求められているのではないだろうか。 結局のところ、サービスとは「思いやり」なのだと思う。そう、あの「お・も・て・な・し」の心である。
合理的なドイツ人に分かるかなあ・・・。 (2014年1月23日)
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