オバサンの独り言

 

   前回の独り言では、ドイツは労働者の権利や宗教が優先するので、消費者ニーズやサービスの利便性が二の次になると書いた。

    確かに、日曜祭日の営業禁止は不便ではあるが、効用もある。近頃はありがたく思うようになった。

    閉店法改正前の営業時間は平日が夕方6時半頃まで、土曜日は午後2時頃までで、日曜祭日は完全にお休み。なんて不便な国なんだろうと、労働組合と教会に腹が立ったものである。

    しかし、改正後は日曜祭日以外は夜の8時頃まで買い物ができるようになったので、それほど不便ではなくなった。慣れてしまえば、日曜祭日という休日は名実ともに「休養の日」として楽しむことができる。

    ドイツは今でも教会税を徴収する国で、政教分離とはいえ、依然としてキリスト教教会の権力が絶大である。何かと政治に介入する教会には反発を感じるが、それを度外視すれば、慌ただしく生活する現代人が喧騒を離れて元気回復できる休養日があることには大いに意義があると思う。

    日本にいると、お店だけでなく、私たちまでが年中無休になってしまう。いつの間にか年中無休に振り回されてはいないだろうか。休日が休養どころか、ストレスになっていないだろうか。

    自然の中を散策したり、カフェでおしゃべりしたり、公園や川辺に寝そべって本を読んだり、美術館へ行って絵画を鑑賞するドイツ人の日曜日の過ごし方を羨ましいと思うか、退屈だと思うかは人それぞれだろうが、「定休日」の効用は意外と大きいのである。私は日本から帰って来ると、ドイツの日曜日にホッとする。

    そんな私が「現代人の依存症」にかかっていることを実感する出来事があった。

    「中断なしにスムーズにプロバイダーを替えることができます」という謳い文句に乗せられて、思い切ってインターネットサービスプロバイダーを替えたのだが、ある日突然、何の予告もなしにインターネットが使えなくなってしまった。

    ああ、やっぱり・・・、私はこれを恐れていたのだ。甘い言葉を信じた私が馬鹿だった・・・。

    電話で問い合わせてもたらい回しされて、埒が明かない。一日中電話してようやく分かったことは1週間以上待たなければならないということだけだった。ドイツ最大の電気通信事業者がこの始末である。ドイツのサービスを呪いたい!

    Eメールを送受信できないから音信不通、新聞(E-Paper)が読めない、検索もできない、だから仕事にならない・・・。多くの事務処理がネット上で行なわれているのでお手上げだ(スマートフォンには限界がある)。WiFiルーターを購入してなんとか凌いだが、重度のインターネット依存症を思い知らされた。

    技術進歩のおかげで、私たちの生活は実に便利になった。いつの間にか便利な技術、サービスが当然になり、どっぷり依存している。利用しているのか、利用されているのか・・・。

    大袈裟かもしれないが、私は今回の経験から現代社会の「便利という名の落とし穴」に危機感を覚えたのである。

    依存症から離脱するために、買い物定休日、インターネット定休日、携帯電話定休日など、「私の・・・定休日」を作ってみてはどうだろうか。定休日とまではいかなくても自粛する日があるといい。

    禁断症状に効く薬の一つはドイツ人の国民的スポーツである「散歩」ではないかと思う。携帯電話もタブレットも持たないで、少なくとも携帯電話を切って、「便利という名の誘惑」のない自然の中を散策すれば、心身ともにリフレッシュできること請け合いだ。

    これこそが、サービスが悪いドイツで私が学んだ、ドイツ人の「自分へのサービス」である。

 2014年4月10日)

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