暮らしの健康

ミュンヘン在住の看護師さんに、毎月1回、「暮らしの健康」についてアドバイスをいただきます。

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日野原スタイル: 筋力アップのススメ

 膝の痛みや腰痛を予防するためには、まず日頃から筋力をつけることが大切といわれています。そこで今回は、解りやすく実践しやすいと思われる筋力アップを日野原重明氏の本(日野原重明著 人生改造「生活習慣病を防ぐ本」)から抜粋してみました。

筋力アップのススメ

 筋力がつくと、基礎代謝量が増えます。基礎代謝量とは生きるための必要最小限のエネルギーのことです。基礎代謝が増えると活動しないときでも多くのエネルギーが消費されるようになるので、「太りにくい体」になります。体力がついて疲れにくくなると、体が軽くなって、運動するのが苦にならなくなり、生活習慣の改善にもつながります。背中が曲がると年とってみられます。腹筋と背筋をバランスよく鍛える必要があるのです

 また、太ももの筋肉とふくらはぎの筋肉を鍛えることで歩幅を広く保ち、体を安定することができます。毎日運動することでバランス感覚を養い、「転びにくい体」をつくることができるのです。

 筋力は鍛えれば鍛えるほどアップします。筋肉が骨を支えているため、筋力がアップされれば骨への負担が軽くなり、骨折やけがの予防になります。

腹筋を鍛える

 床に足を伸ばして座り、手を脚と平行に伸ばし、ゆっくり後へ倒す(頭を床まで下ろしてしまわない。無理のないところまで。息を止めないこと)。1020回繰り返す。

背筋を鍛える

 床にうつ伏せに寝て、両手を肩幅にまっすぐ伸ばし、片足ずつ足を上げ、下ろす(息を止めないこと)。

太ももとふくらはぎを鍛える

 椅子の背の前に立ち、椅子の背に手をかけ、ゆっくり膝を曲げかがむ。そのあとゆっくり体を持ち上げ、つま先立ちになる(かがむさいにお尻がつき出ないようまっすぐ落とす)。1020回繰り返す。

太ももを鍛える

 椅子に座り、ゆっくり片足を持ち上げ、膝を伸ばす。伸ばしきった状態で 5秒止めた後、元に戻す。10回~20回繰り返す。

 回数は無理をしないよう、また痛みを感じない程度に様子をみながら徐々に増やし、鍛えていきましょう。(今、痛みがある方はやってはいけません。)

 私もやってみましたが、これなら簡単に誰でもできると思いました。毎日繰り返しやっていくことで習慣化し、鍛えられていきます。手軽にできるので、毎日無理なく継続していきましょう。       

2007515日)

 

生活習慣病の予防におけるごはん食の役割

ごはんを中心にした日本の食文化を見直そう!(続々編)

Ⅲ.糖尿病におけるごはん食の役割

 戦後、日本人の食生活は欧米化され、糖尿病患者が50年間で50倍に増えています。WHOは、このままでは2000年生まれの子供の4割が将来、糖尿病を発生すると警告しています。今、食生活を見直すことが課題です。

体内の糖の流れ

 健康な人が食事をすると、小腸でブドウ糖と果糖に分解・吸収され、肝臓に流れ込みます。肝臓に流れ込むと、膵臓からインシュリンが分泌されて肝臓に入ります。肝臓を通り抜けたブドウ糖が全身の血糖値を上昇させますが、血中のインシュリンが働いて、ブドウ糖を筋肉や脳・神経などに取り込み、血糖値を常に正常に保ちます。

 しかし、肝臓が脂肪肝であったり、運動不足で筋肉の脂肪量が増えたりしていると、インシュリンの働きが悪くなり、食後血糖値が高くなります。

 この状況を放置すると、糖尿病になりかねません。

肝臓の脂肪を燃やすと、糖の流れが正常化します

 血糖値がやや高めの段階では、まず積極的な脂肪食の制限、また運動で、肝臓の脂肪は燃えやすくなります。

 体重はそれほど減っていなくても、体の糖代謝、脂肪代謝が高まり、糖の流れが正常化します。

ご飯をきちんと摂って間食を控える

 食事は一日3回、バランスよく摂る。間食は甘い菓子類が多くなり、血糖値が高くなりやすいので控えましょう。ご飯をきちんと摂ると腹もちがよく、間食を控えられます。ご飯を中心に脂肪を抑えた献立を心がけましょう。

あなたの生活を振り返るチェックポイント!

食生活

* ご飯を食べないでおかずを優先して食べていませんか?

* 揚げ物など脂っこいものをよく食べていませんか?

* 毎日アルコールを飲みますか?

* 食事の時間を決めていますか?

➡ 洋食より和食を心がけましょう。ご飯は低脂肪で理想的な主食です。間食を控えて、規則正しく食事をしましょう。

運動

* 毎日長時間テレビを見ていませんか?

* 車を使うことが多くありませんか?

* 一日どのくらい歩きますか?

* 何か決まった運動をしていますか?

➡ 好きなスポーツ(テニスや水泳など)を続けて行うのが理想的ですが、日常生活のなかで階段を使う、テレビを見る時は立って見たり、体を動かしながら見るなど、こまめに体を動かし、ちょっとした工夫をして運動不足を解消しましょう。できれば一日1万歩、歩くことをおすすめします。

糖尿病の診断基準

A. 次の 1)~ 3)のいずれかに該当する場合、「糖尿型」と判定する。

1)    随時血糖値が200㎎/dL以上が確認された場合

2)    早朝空腹時血糖が126㎎/dL以上が確認された場合

3)    75gブドウ糖経口負荷試験で120分後の血糖値が200㎎/dL以上が確認された場合

B. 別の日に再検査をおこなって、上記 1)~ 3)のいずれかで、再度「糖尿病型」が確認できれば、「糖尿病」と診断する

(日本糖尿病学会:科学的根拠に基づく糖尿病診断ガイドライン2004より)

2007411日)

 

生活習慣病の予防におけるごはん食の役割 (続編)

ごはんを中心にした日本の食文化を見直そう!

Ⅱ.肥満予防におけるごはん食の役割

 中高年の3人に1人がBMI( Body Mass Index : 肥満度 )25以上で、肥満と判定されています。日本人の肥満は軽度であっても欧米人と比べて高血圧・高脂血症・糖尿病を起こしやすい体質といわれています。肥満予防には過食を慎み、運動不足を解消するなど、生活習慣の改善が欠かせません。

肥満はなぜいけないのか

 適正なBMIは18,5以上25未満です。BMIが高くなるにしたがって、高血圧・高脂血症・糖尿病の発症率が高くなり、合併症を起こしやすくなります。BMIが25以上の人は発症率が2倍となり、内蔵周囲に脂肪がつく内臓脂肪型肥満では、さらにリスクが高まります

内臓脂肪を減らすためにごはん食を!

 肥満の予防と内臓脂肪を減らすためには、脂っこい食事や砂糖の多い甘いお菓子を控え、ごはんを主食とし、身体を動かすことです

 ごはんは良質な植物性たんぱく質を含み、単位重量あたりのエネルギーが低い主食で、魚や野菜と組み合わせた献立は低カロリーで、バランスのよい食事です。

- 肥満予防に対してのごはん食のメリット -

ごはんは単位重量あたりのエネルギーが低い 100g 当たり

ごはん           168 Kcal

クロワッサン   448 Kcal

ロールパン     316 Kcal(ドイツのパンはこれかな?)

フランスパン   280 Kcal(ドイツのバケット?)

パスタ       213 Kcal(オリーブ油を含む)                          

日本型の食事は低エネルギーの組合せが可能

1. 魚、野菜と合わせやすい

2. 脂肪の少ない食事

3. 植物性たんぱく質の確保

4. バランスのよい献立が可能

5. 満腹感、満足感が得やすい

食事のとり方チェックポイント

* 主食のごはんを減らしていませんか

* 朝食を摂っていますか

* 砂糖の多い間食や料理をたくさん食べませんか

* 食事はいつもお腹いっぱい食べていませんか

* 夜遅い時間に食べていませんか

* 肉類が好きですか

* 毎食、野菜料理を食べていますか

➩  脂肪の多い食事や油を使った料理を控え、ごはんで満腹感、満足感を得ましょう。

 主食には、低脂肪の魚、野菜料理を組み合わせやすいごはんが一番よいのです。

 そして、食事は朝、昼、夕に規則正しく摂とりましょう。

ウエストを測ろう

 ウエストは内臓肥満型の目安とされています。自分のお腹回りがどうなっているか知っておきましょう。

 測り方はくびれているウエストでなく、おへその高さで測ります。

 ウエストが1cm縮まると、内臓脂肪は4%減ります

20073月12日)

 

生活習慣病の予防におけるごはん食の役割

ごはんを中心にした日本の食文化を見直そう!

和食は健康食として世界中から注目を集めています。ごはん(米)を軸に副食を摂る食文化がいかに健康によいかをシリーズで載せてみます。

Ⅰ.高血圧・心臓・血管病の予防におけるごはんの役割

食習慣はとても重要

ハワイに移住した1世、2世の日本人と、日本に住む同世代の人のBMIやコレステロール値などを比較したところ、ハワイに移住した人たちのほうが数値が高く出ました。遺伝的素因は同じなので、原因は食習慣の違いが考えられます。

同じ現象が沖縄でもありました。沖縄は長い間日本一の長寿県でしたが、平成12年(2000年)に平均寿命が全国順位26位に急転落しました。食生活が欧米化しやすい環境にあり、食習慣の変化が生活習慣病などの健康障害につながったことを暗示しています。このようなことから、ごはんを中心とした日本の食文化がいかに健康的であるかが納得できます。

動物性脂肪の摂り過ぎに注意

高血圧・心臓病(冠動脈疾患)・血管病(脳梗塞)は、日本人の脂肪の摂取量の増加に伴い、コレステロール値が上昇し、発症率が高くなりました。

これらの発症を防ぐにはコレステロール値、特にLDHコレステロール値を下げることが重要です。

内臓脂肪型肥満も高血圧・心臓病・血管病の発症を高める

脂肪摂取量の増加は、BMI(Body Mass Index 肥満度: 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))が高くなることにもつながっています。特に、最近つくられたメタボリックシンドロームの診断基準では、腹部の肥満である内臓脂肪型肥満が健康障害の発生頻度を高め、冠動脈疾患を発症しやすいことが示されています。

ごはん食を軸に置く日本の食文化を大切に

同じエネルギーの食事でも脂肪の多い食事より、バランスよく炭水化物を多くとる食事の方が、コレステロール値が低下します。また、体重のコントロールはコレステロール値、血糖値、高血圧の状態をよい方向に導きます。

ごはんを主食に、魚、野菜、味噌汁を組合せるバランスのよい日本型の食事の献立が勧められます。日本の食文化の価値を再認識し、大切に次世代に引き継いでいく食育が今後ますます重要になります。

コレステロール、注意してますか? ごはんはコレステロールを含んでいません

血中のコレステロール値はコレステロールを多く含む食品を食べることによっても上がりますが、摂取エネルギーの過剰によっても上がります。これは、体内でコレステロール合成を促進してしまうからです。「食べすぎ」に気をつけましょう。

ごはんと上手に組み合わせましょう

イワシ、サバなどの青魚、納豆などの大豆製品、食物繊維を多く含む野菜や海草などはコレステロールを下げる働きをします。どれもごはんとよく合うので、上手に取り入れましょう。

20072月14日)

 

早朝高血圧(起きがけ高血圧)

- 心筋梗塞、脳率中の危険が高い早朝高血圧のメカニズムと対策 -

 このコーナーで高血圧について何回か紹介してきましたが、今回は、健康診断の結果は良好なのに、心筋梗塞の前段階である「狭心症」の症状が出てから高血圧症と気づく、健康診断では見つからないタイプの早朝高血圧症を採り上げます。NHKの“ためしてガッテン-「知らなかった!高血圧・衝撃の新事実」”の資料をもとにその1部をまとめてみました。

例:

 Aさん58歳(男性)、趣味は旅行。健康診断ではおおむね良好で、健康には自信を持っていました。ところが、4~5年前から食道から胃のあたりに違和感をおぼえるようになり、受診したところ、「狭心症」と診断されました。そして、Aさんは、朝起きた直後の血圧が上がる「早朝高血圧症」が長年続いたことが原因だと言われました。

 Aさんの血圧を詳しく調べた結果、診察室では146mmHg(上の値)であるのに対して、起きがけは165mmHg(上の値)であり、典型的な早朝高血圧症でした。

* 血圧が正常な人の場合、起きがけの血圧が135mmHgより高くなることはありません。

1.心筋梗塞や脳卒中が起こる時間は、

心筋梗塞・・・起床から1時間以内

脳卒中・・・起床から2時間以内

に集中していることが判明しており、早朝高血圧が大きな原因だと考えられています。

2.起きがけに血圧が上がる理由

* 血管内皮細胞(血管内皮細胞)について

 誰しも起きがけは血圧が上がります。これは、目覚めて日中に活動する準備をするために「血圧を上げるホルモン」が働くためです。但し、血圧が上がり過ぎないように「血管内皮細胞」という調節する機能があり、ある程度血圧が上がるとこの物質が血管を広げます。この血管が正常であれば、起きがけでも血圧が上昇することはありません。

* 血管の粥状(じゅくじょう)硬化について

 血管は寒さにさらされたり、身体を動かしたり、ストレスにさらされると、血圧が上がります。血圧が上がると、血管に負担がかかり、このときに動脈硬化などがあると、一部に傷ができること、これを「粥状硬化」といいます。これを修復しようと血小板が集まってきますが、しばしば血栓になることがあります。心臓の血管でこれが起きると、心筋梗塞を起こしてしまうわけです。粥状硬化は30歳代からできはじめ、60代以上のほとんどの人にあると考えられています。血管内皮細胞が弱って、血管を広げることができないと、血圧が上がりっぱなしになってしまいます。最悪のケースは血管に粥状硬化があるときで、心筋梗塞や脳卒中のリスクが一気に高まります。

3.内皮細胞が弱く、早朝高血圧症の可能性がある人

 喫煙

 アルコールを多く飲む人

 肥満

 高血糖

 高齢者

 上下の血圧値の差が大きい人(50歳以上で65より大きい人)

4.早朝高血圧症かどうかの見分け方

寝る前と起きた後(30分以内)に血圧を測ります

* 上の値の差が20mmHg以上(例: 就寝前130、起きた後160

* 上の平均値が135mmHg以上 (例: 就寝前130、起きた後140の場合)

5.最も危険なケース

 血圧を下げる薬を飲んでいる人です。寝ている間に知らないうちに薬の効果が切れていることがあります。このような場合、起きがけに血圧が急上昇している場合があり、特に危険です。

 ミュンヘンの冬は特に寒いので、起がけに外に飛び出してジョギングなどは最も危険です。

6.早朝高血圧症から脱する法

* 3.で採り上げた「内皮細胞が弱い人」の項目に該当する人は生活習慣を見直してみることが先決です。

* 血管内皮細胞を回復させるためには「歩く」ことです。但し、起がけは厳禁!

 ウォーキングについては、暮らしの健康20065月29日「レッツ運動療法のにこにこペースでウォーク」を参照下さい。

付録

「日本初!心筋梗塞予報」

 広島県では、翌日の心筋梗塞の起こりやすさを「警戒」「注意」「普通」の3段階に分け、「心筋梗塞予報」をテレビ・新聞・インターネットで出しています。

 その根拠は翌日の平均気温と平均気圧で、1日の平均気温が6℃未満、平均気圧が1013ヘクトパスカル未満になると、心筋梗塞による救急隊の出動総数がそれ以外の気象条件の日と比べて4割以上も増えるそうです。

 これはあくまで目安で、寒い地方の人は寒さに慣れているので、「気温が6℃以下では危険」ということではありません。ただ、気温が低ければ低いほど心筋梗塞の発作を起こしやすいということです。気象条件は病気と関係があるのですね。寒さの厳しいミュンヘンの冬には特に気をつけましょう。

* 更に詳しく知りたい方は 20071月10日放送: ”ためしてガッテン“

URL  http://www.nhk.or.jp/gatten/)を参照して下さい。

20071月29日)

 

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